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せん妄の種類と特徴を知りたい方へ|高齢者に多い症状や認知症との違いをやさしく解説

老後の暮らしの中で、急に家族の様子が変わったり、混乱した言動が見られたりすると、不安や戸惑いを感じる方も多いと思います。高齢者に多く見られる「せん妄」は、誰にでも起こり得る症状で、適切な理解と対応がとても大切です。

本記事では、せん妄の基礎知識や認知症との違い、原因や症状、家族や介護者ができる対応方法などを分かりやすく解説します。日々の介護やご自身の備えに役立ててください。

目次

せん妄とはなにかを分かりやすく解説

せん妄の種類

せん妄は、とくに高齢者の入院や持病に伴って起こる意識障害の一つです。突然おこる混乱や会話の支離滅裂さなど、家族が気づきやすい特徴があります。

せん妄の基本的な意味と特徴

せん妄とは、脳の働きが一時的に乱れることで起こる意識障害のことです。突然、周囲の状況が分からなくなったり、注意が散漫になったりします。話が通じにくくなったり、時間や場所の感覚が不安定になることも多いです。

一般的に、せん妄は急に現れるのが特徴です。普段はしっかりしていた方が、急に落ち着きがなくなったり、逆にぼんやりして反応が鈍くなる場合もあります。また、夕方から夜になると症状が悪化することもあります。一時的に回復することもありますが、根本的な原因が解消されないと再発しやすい点も特徴です。

せん妄と認知症との違いを知ろう

せん妄と認知症は、どちらも高齢者に多く見られますが、その症状や進行のしかたにははっきりとした違いがあります。認知症は少しずつ進行し、物忘れや判断力の低下が徐々に目立ってくるのが特徴です。

一方でせん妄は、数時間から数日で急に現れることが多く、原因が改善されればもとに戻ることも少なくありません。また、せん妄の場合は症状に波があり、昼間は落ち着いていても夜間に悪化することがあります。両者を混同しやすいですが、発症のスピードや症状の変動の有無が大きな見分け方のポイントとなります。

せん妄が起こる年齢と発症しやすい人

せん妄は、特に高齢者で起こりやすい症状です。年齢とともに、身体や脳の働きが弱まることで、ささいな体調変化や環境の変化がきっかけとなることがあります。

また、持病を持つ方や、手術や入院を経験した方、薬を多く使っている方も発症しやすい傾向にあります。以下のような特徴がある方は、特に注意が必要です。

  • 75歳以上の高齢者
  • 認知症や脳の病気がある
  • 慢性的な持病(糖尿病・心臓病など)を持っている
  • 薬を多く服用している
  • 体調不良や感染症にかかっている

せん妄の主な症状と見分け方

せん妄の症状は多様ですが、代表的なものには次のような特徴があります。家族や介護者が見逃さないよう、日々の様子を注意深く観察することが大切です。

  • 突然、混乱や錯乱した言動が現れる
  • 会話がかみ合わない、話がとびとびになる
  • 時間や場所が分からなくなる
  • じっとしていられず落ち着きがなくなる(過活動型)
  • 逆にぼんやりして反応が鈍くなる(低活動型)

特に急に現れた場合や、普段と様子が大きく違うときは、せん妄の可能性を考えて医療機関に相談しましょう。

せん妄の種類とそれぞれの特徴

せん妄の種類

せん妄には、活動性や症状の現れ方によっていくつかの種類があります。ここでは、それぞれの特徴と対応ポイントを解説します。

過活動型せん妄の特徴と対応方法

過活動型せん妄は、落ち着きがなくなったり、大きな声を出したり、動き回るなどの行動が目立ちます。興奮して手が付けられなくなることもあり、家族や介護者を困らせてしまう場合があります。

対応のポイントは、本人の安全を最優先に考えることです。無理に抑え込んだりせず、危険なものを周囲から遠ざけたり、静かな環境に移動させるなど工夫をしましょう。また、本人の不安を和らげるために、やさしく声をかけたり、手を握るなどの安心感を与えることが大切です。

低活動型せん妄の見分け方

低活動型せん妄は、普段よりもぼんやりして反応が鈍くなる、話しかけても返事がはっきりしないなど、一見すると「疲れているだけ」と見られがちです。しかし、見過ごされやすい分、適切なケアが遅れることもあるため、特に注意が必要です。

高齢者が急に表情が乏しくなったり、日常の会話や動作がゆっくりになった場合は、単なる疲労や眠気と決めつけず、せん妄の可能性を考えて専門家に相談することが重要です。

混合型せん妄の症状とケアのポイント

混合型せん妄は、過活動型と低活動型の特徴が日によって、あるいは時間帯によって入れ替わり現れるタイプです。日中はぼんやりしているのに、夜になると急に興奮するケースも少なくありません。

このような場合、状況に応じた柔軟な対応が求められます。本人が落ち着かないときは環境を静かにし、逆に無気力なときには声をかけて刺激するなど、家族や介護者の細やかな配慮が大切です。

夜間せん妄や術後せん妄など特殊なケース

夜間せん妄は夕方から夜にかけて症状が強く出るタイプで、「日没症候群」と呼ばれることもあります。夜になると不安が増したり、幻覚を見る場合もあるため、照明をやや明るめにしたり、家族がそばについて安心させることが大事です。

また、手術後の入院中などに起きる「術後せん妄」は、高齢者や持病のある方に多く見られます。環境の変化や身体の負担がきっかけになるため、医療スタッフや家族が情報を共有し、早めの対応を心がける必要があります。

せん妄の主な原因と発症リスクについて

せん妄の種類

せん妄が起こる背景には、さまざまな要因が関わっています。ここでは、主な原因やリスクについて分かりやすくご紹介します。

準備因子とはどんなものか

準備因子は、せん妄が発症しやすくなる下地となる要素のことです。特に高齢者の場合、体力や免疫力の低下、脳の機能が弱まっていることが大きな影響を与えます。

具体的には、認知症や脳卒中の既往、視力や聴力の低下、慢性的な病気などが挙げられます。こうした準備因子があると、ちょっとした体調の変化や環境の変化がきっかけで、せん妄が起きやすくなります。

直接因子が与える影響

直接因子とは、せん妄を引き起こす直接的なきっかけになる出来事や状態を指します。たとえば、発熱や感染症、脱水、手術、薬の副作用などです。

これらは準備因子がある状態で重なると、せん妄が発症しやすくなります。特に高齢者は、たった数日の入院やちょっとした病気でも、強い影響を受ける場合があるため注意が必要です。

促進因子とせん妄発症の関係

促進因子は、せん妄が起きるまでの時間を早めたり、症状を重くする要素です。たとえば、環境の変化(引っ越しや入院)、睡眠不足、不安やストレスなどが促進因子に該当します。

高齢者は環境の変化に敏感なので、病院や施設に入るときは、できるだけ本人が安心できるよう配慮することが、せん妄の予防につながります。

高齢者や持病がある人に多い理由

高齢者や慢性的な病気がある方は、体や脳の予備力が落ちているため、せん妄が起こりやすい傾向があります。たとえば、体の水分が減りやすかったり、薬の影響を受けやすかったりするためです。

また、持病によって複数の薬を使っていたり、感染症にかかりやすいことも関わっています。普段から体調の変化に気を配り、早めの対応を心がけることが、せん妄の予防に役立ちます。

せん妄への対応と予防のための実践ポイント

せん妄の種類

せん妄を早く見抜き、適切に対応することが、本人と家族の安心につながります。ここでは、日常生活でできる工夫や予防のためのポイントを整理します。

家族や介護者ができる初期対応

せん妄の症状に気づいたとき、まずは落ち着いた態度で本人に対応することが大切です。「突然どうしたの」と驚いたり、強く叱ったりすると、かえって不安を強めてしまいます。

基本的な初期対応の例は次の通りです。

  • 本人の安全を確保する(転倒しないように見守る)
  • 静かな場所で安心できるようにする
  • ゆっくりと分かりやすい言葉で話しかける
  • 体調や服薬の様子を確認する

早めに医療機関に相談し、症状や状況を詳しく伝えることも大切です。

環境調整や生活リズムの見直し

せん妄の予防や症状の改善には、生活環境を整えることが効果的です。たとえば、部屋の照明や温度を快適に保ち、時計やカレンダーを見やすく配置することで、本人が今の状況を把握しやすくなります。

また、生活リズムを整えることも重要です。毎日同じ時間に食事をとったり、適度に日光を浴びたり、日中に軽い運動をすることで、昼夜の区別がつきやすくなります。無理のない範囲で、規則正しい生活を心がけましょう。

医療機関での治療や薬物療法

せん妄が疑われる場合、専門の医療機関で診断を受けることが必要です。原因となる病気や薬の副作用が見つかれば、それを治療することで症状が和らぐことがあります。

場合によっては、せん妄の症状を抑える薬が使われることもあります。ただし、薬の使用には注意が必要なので、医師の指示に従い、自己判断で薬を増減しないようにしましょう。

せん妄予防のための生活習慣とケア

せん妄の予防に向けては、健康的な生活習慣を維持することが大切です。十分な水分補給や栄養バランスのよい食事、適度な運動を心がけましょう。

また、下記のようなポイントに注意しましょう。

  • 睡眠環境を整え、夜間はしっかり休めるようにする
  • 急な環境変化はできるだけ避ける
  • 持病や服薬の管理をきちんと行う
  • 感染症の予防として手洗い・うがいを徹底する

これらの工夫が、せん妄の発症リスクを下げる助けになります。

せん妄と他の疾患との違いを正しく理解する

せん妄は一見、認知症やうつ病、妄想症状と似ている場合もあります。ここでは、混同しやすい症状や違いについて整理していきます。

認知症やうつ病との違いを整理

認知症やうつ病とせん妄は、症状が似ている部分もありますが、発症や進行の特徴が異なります。認知症は徐々に進行していくのに対し、せん妄は急に現れます。

また、うつ病は気分の落ち込みや意欲の低下が中心ですが、せん妄では会話や行動の混乱、時間や場所が分からなくなるといった特徴が強く出ます。これらの違いを正しく理解することで、適切な対応がしやすくなります。

せん妄と妄想や幻覚の違い

せん妄でもときに「幻覚」や「妄想」のような症状が現れますが、本質的には異なります。せん妄は意識が混乱した状態で現れるのに対し、妄想は比較的意識がはっきりしていることが多いです。

また、幻覚や妄想だけが目立つ場合は、他の精神的な病気の可能性もあります。せん妄では、こうした症状と同時に、時間や場所がわからない、注意が散漫になるといった特徴もセットで現れます。

せん妄が一時的に現れる理由

せん妄は、多くの場合、一時的に起こる症状です。その背景には、体調の急な変化や薬の影響、環境の変化など、脳に一時的なストレスがかかったことが関係しています。

こうした原因が解消されると、せん妄の症状も消えていくことが少なくありません。特に高齢者では、入院や手術、感染症などがきっかけになることが多いので、こまめな体調管理が大切です。

せん妄が重症化した場合の注意点

せん妄が長引いたり、重症化した場合は、本人の混乱や不安が強くなり、転倒や事故など二次的なトラブルにつながることがあります。安全管理や見守りを徹底することが重要です。

また、長期化する場合は、脳や身体の他の病気が隠れていないか、医師にしっかり相談しましょう。早めの対応が、本人の回復と生活の質を守るポイントになります。

まとめ:せん妄の種類と特徴を知り正しい対応を選ぼう

せん妄は高齢者に多く、種類や症状もさまざまですが、正しい理解と早めの対応が本人と家族の安心につながります。

本人の様子に突然の変化が見られた場合は、慌てず落ち着いて対応し、必要に応じて医療機関に相談しましょう。普段からの予防や生活環境の工夫も大切にし、せん妄と上手につきあっていくことが、老後の暮らしをより豊かにするポイントです。

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この記事を書いた人

老後はまだ先のこと…そう思っていた時期もありました。でも、介護や終活のことを少しずつ知っていくうちに、「早くから知っておくことはやさしさなんだ」と思うように。このブログでは、介護や住まい、終活の基本をやさしく整理して発信しています。誰かの将来の不安を、少しでも和らげるきっかけになりますように。

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