年齢を重ねると、歩き方や体の動きに少しずつ変化が現れることがあります。「最近、歩くときに足を引きずるようになってきた」と感じている方や、ご家族の歩き方が気になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。特にすり足歩行は転倒やケガにつながるリスクがあるため、早めに対策をすることが大切です。
本記事では、すり足歩行の原因やリスク、改善のためのポイントや自宅でできるトレーニング、日常生活での工夫について詳しく解説します。安心して老後を過ごすためのヒントとして、ぜひ参考にしてみてください。
すり足歩行とは何か原因とリスクを正しく知ろう

年齢を重ねると気づかないうちにすり足歩行になることがあります。原因やリスクを知り、早めの対策を考えていきましょう。
すり足歩行の特徴と見分け方
すり足歩行とは、歩くときに足の裏全体を地面につけたまま前に進む歩き方です。通常の歩行では、かかとからつま先へと体重を移しながら足を運びますが、すり足歩行の場合は、この動きがうまくできません。そのため、歩行の際に靴やスリッパが床をこすって音がしたり、足が十分に上がっていない様子が見られます。
次のような特徴がある場合は、すり足歩行の可能性が考えられます。
- 歩くときに足元で「シュッ」「ズッ」と音がする
- 歩幅が極端に狭くなっている
- 上半身が前かがみになりやすい
- 足を持ち上げず、引きずるように歩く
このような特徴が見られた場合、転倒などのリスクが高まるため、意識して歩き方を見直すことが大切です。
高齢者にすり足歩行が多い理由
高齢になると、筋力の低下や関節の動きが硬くなることが多くなります。これにより、足を高く上げることが難しくなり、自然とすり足歩行になりやすくなります。また、バランスを取る力も衰えるため、足をしっかり上げて歩くことが不安に感じられがちです。
さらに、加齢による運動不足や慢性的な疲れ、神経系の働きの衰えも関係しています。特に長期間ベッドや椅子で過ごす時間が増えると、筋肉を十分に使わないため、歩行の際に足が持ち上がりにくくなります。日常生活で意識して身体を動かすことが、すり足歩行の予防や改善につながります。
すり足歩行による転倒やケガのリスク
すり足歩行は、つまずきやすくなるため転倒のリスクが大きくなります。特に自宅内の段差やカーペットの端、滑りやすい床など、わずかな障害物でも足元をとられてしまうことが増えます。
転倒による骨折や打撲は、その後の生活の質を大きく下げる要因になります。また、転倒をきっかけに運動を控えるようになり、さらに筋力やバランス力が低下する…という悪循環に陥りやすくなります。すり足歩行を早めに見つけて対応することは、健康な老後を送るために欠かせないポイントです。
すり足歩行の主な原因筋力低下やバランスの問題
すり足歩行の大きな原因は、足腰の筋力低下とバランス感覚の衰えです。特に太ももやふくらはぎ、足首まわりの筋肉が弱くなると、足を高く持ち上げる動作が難しくなります。
また、体幹の筋肉が弱ることで、体全体のバランスを保てなくなり、転倒への不安からすり足歩行になりやすくなります。さらに、運動不足や長時間同じ姿勢でいることも原因として挙げられます。日頃から意識的に筋肉を使うことを心がけることが、すり足歩行の予防や改善につながります。
すり足歩行を改善するための基本対策

すり足歩行を改善するには、日々の意識が大切です。基本的なポイントを押さえ、無理なく少しずつ取り組みましょう。
姿勢を正すことの重要性
歩くときの正しい姿勢は、すり足歩行の改善に大きな効果があります。背筋を伸ばしてまっすぐ前を見て歩くことで、体全体に力が入りやすくなり、足も自然と高く上がるようになります。肩をリラックスさせ、頭のてっぺんから糸で引っ張られているようなイメージを持つと、正しい姿勢を意識しやすくなります。
また、姿勢が悪いと筋肉が効率よく使えず、余計に疲れやすくなったり、バランスも崩れやすくなります。日頃から鏡で自分の姿勢をチェックしたり、壁に背をつけて立つことで、正しい姿勢を確認する習慣をつけるのもおすすめです。
足腰の筋力アップが歩行改善のカギ
足腰の筋力を鍛えることは、すり足歩行の予防と改善のための基本です。特に太もも、ふくらはぎ、股関節まわりの筋肉がしっかりしていれば、足をしっかり持ち上げて歩くことができるようになります。
家の中でもできる簡単な筋トレを日課に取り入れるのがおすすめです。たとえば、椅子に座った状態でつま先やかかとを上げ下げしたり、立ったまま膝を少し曲げて腰を落とすスクワットなどが効果的です。無理なく続けることが大切なので、最初は回数や負荷を少なめにして慣れてきたら少しずつ増やしていきましょう。
バランス能力を高める簡単トレーニング
バランス能力の向上は、転倒予防にも大きく役立ちます。まずは片足立ちの練習が効果的です。椅子や壁など、支えがある場所で片足をゆっくり上げて10秒ほどキープします。慣れてきたら、支えを使わずに行うとより効果的です。
次のような簡単なバランストレーニングを日課に加えてみましょう。
- 片足で立ったまま、反対側の足を前後に軽く動かす
- 両足を揃えてその場でつま先立ちをする
- 目を閉じて立つ(安全な場所で)
これらのトレーニングは習慣化することで、少しずつ体の安定感が増していきます。
日常で意識したい歩き方のコツ
普段の歩き方を少し意識するだけでも、すり足歩行の予防や改善につながります。まず、「かかとから着地してつま先で蹴り出す」ことを心がけると、自然と足が上がりやすくなります。歩幅をやや広めにとる意識を持つのも効果的です。
また、足元ばかり見ずにやや前方を見て歩くことも大切です。これにより、背筋が伸びてバランスがとりやすくなります。意識的に「しっかり一歩一歩踏みしめる」ことを続けると、徐々に歩き方が安定していきます。
自宅でできるすり足歩行改善トレーニング

毎日の生活の中で簡単にできるトレーニングを取り入れることで、無理なくすり足歩行の改善を目指せます。体力や体調に合わせて無理のない範囲で行いましょう。
つま先上げ運動で歩行をサポート
つま先上げ運動は、足首の柔軟性を高め、歩くときに足をしっかり持ち上げる力を養うトレーニングです。椅子に腰掛けた状態で、かかとを床につけたままつま先だけを上げ下げします。10回ほど繰り返すことで、足首まわりの筋肉が鍛えられます。
この運動は、テレビを見ながらや食事の前後など、ちょっとした時間にもできるのが特徴です。毎日続けることで、歩くときに足が上がりやすくなり、すり足歩行の改善につながります。
かかと上げ運動でふくらはぎを鍛える
かかと上げ運動は、ふくらはぎの筋肉を鍛えるトレーニングです。足を肩幅に開いて立ち、つま先を床につけたまま、かかとをゆっくり持ち上げて戻します。これを10回1セットとして、無理のない範囲で繰り返しましょう。
ふくらはぎがしっかりしていると、歩行時の蹴り出しが力強くなり、自然と足が上がります。椅子や壁を軽く支えにして行うと、バランスを崩しにくく安全です。日常のすきま時間を活用して取り入れてみてください。
腿上げ運動で股関節の動きを改善
腿上げ運動は、太ももと股関節まわりの筋肉を強化し、足を高く上げる動作をサポートします。椅子に座った状態、または立った状態で、片足ずつ膝を胸に近づけるように上げ下げします。左右交互に10回ずつ行うのが目安です。
股関節の動きが柔らかくなると、歩くときの足の運びがスムーズになります。最初は無理せず、自分のペースでゆっくり動かすことを意識しましょう。痛みや違和感がある場合は、回数を減らすか休憩を取り入れることも大切です。
バランスチェックで転倒予防を強化
日常的にバランス能力を確認することで、転倒リスクを早めに察知できます。おすすめのバランスチェック方法は、「片足立ちテスト」です。壁や机に手を軽く添え、片足を5~10秒ほど上げてみましょう。ふらつきが強い場合は、バランス力のトレーニングを強化する目安になります。
他にも、次のような簡単なチェック方法があります。
- 両足を揃えて目を閉じて10秒立てるか
- その場で足踏みをしてふらつかないか
これらのチェックを定期的に行うことで、自分の変化に早めに気づきやすくなります。
すり足歩行を防ぐための日常生活の工夫

安全に日々を過ごすためには、生活環境や身の回りの工夫も大事です。ちょっとしたことから始めて、転倒やすり足歩行の悪化を防ぎましょう。
家の中の安全対策段差や滑りやすい場所への配慮
家庭内には、つまずきやすい場所が意外と多くあります。特に段差や敷居、カーペットの端などは注意が必要です。家具の配置を見直したり、滑りやすい床には滑り止めマットを敷くなどの工夫をしましょう。
また、夜間の移動時には足元を照らすライトを使うと安全性が高まります。玄関やトイレの前には手すりを設置するのも効果的です。家族で協力して、自宅を安全に保つことが大切です。
靴選びとフットケアで歩行をサポート
歩きやすい靴を選ぶことも、すり足歩行の予防に重要です。ポイントは以下のとおりです。
| 靴選びのポイント | 内容 |
|——————|—————-|
| 足に合ったサイズ | つまずきにくい |
| かかとがしっかり | 安定感がある |
| 軽くて柔らかい | 疲れにくい |
また、足の爪や皮膚のケアも忘れずに行いましょう。爪が伸びすぎていたり、タコやウオノメができていると、歩くときにバランスを崩しやすくなります。足元の健康を保つことが、快適な歩行につながります。
毎日のウォーキングを習慣にするコツ
無理のない範囲でのウォーキングは、筋力やバランス力の維持に役立ちます。毎日決まった時間を作ることで、運動の習慣がつきやすくなります。たとえば「朝食後に10分間歩く」「買い物の際に遠回りして帰る」など、小さな工夫で継続しやすくなります。
歩くときは正しい姿勢とゆったりしたペースを心がけましょう。友人や家族と一緒に歩くことで、楽しみながら続けられます。天候が悪い日は、室内で足踏み運動をするのも良い方法です。
介護サービスや専門家の活用方法
一人での改善が難しい場合は、地域の介護サービスやリハビリ専門家の力を借りるのも選択肢です。たとえば、デイサービスに通って運動プログラムに参加したり、リハビリスタッフから歩行や運動のアドバイスを受けることができます。
また、福祉用具のレンタルや住宅改修の相談なども、地域包括支援センターなどで受け付けています。困ったときは早めに相談し、必要なサポートを受けながら安全な生活を心がけましょう。
すり足歩行改善のために知っておきたいポイント
すり足歩行の予防や改善には、毎日の生活習慣や周囲の協力も欠かせません。知っておきたい大切なポイントをまとめます。
すり足歩行の早期発見と家族のサポート
すり足歩行の変化は、本人よりも家族が先に気づくことがよくあります。日常の中で「最近歩き方が違う」「転びやすくなった」というサインを見逃さず、声を掛け合うことが大切です。
家族が「一緒に運動しよう」と声をかけたり、歩行練習に付き添ったりするだけでも、安心感につながります。また、定期的に歩行の様子をチェックすることで、悪化を防ぐことができます。小さな変化に気づいたら、早めに専門家に相談するのもおすすめです。
介護予防に役立つレクリエーションやアクティビティ
体を動かすことが楽しくなるようなレクリエーションやアクティビティに参加することで、自然と筋力やバランス力が鍛えられます。たとえば、次のような活動がおすすめです。
- 軽い体操やストレッチ体操
- 輪投げやボール投げ
- フラフープを使ったバランス運動
趣味やゲームを取り入れると、楽しみながら続けやすくなります。地域の集まりやサークル活動に参加するのも良い刺激になります。
食事や生活習慣が歩行に与える影響
バランスの良い食事をとることは、筋肉や骨の健康維持に欠かせません。特に、たんぱく質やカルシウム、ビタミンDを意識して摂ることが大切です。水分補給も忘れずに行いましょう。
また、規則正しい生活リズムを心がけ、しっかり睡眠をとることも身体の回復に役立ちます。アルコールやタバコは控えめにし、ストレスを溜めないよう意識することも、元気な歩行を支えるポイントです。
モチベーション維持のための工夫
すり足歩行の改善には、継続的な取り組みが必要です。しかし、毎日同じことを続けるのは簡単ではありません。目標を小さく設定し、達成できたら自分を褒めることがモチベーション維持につながります。
たとえば、「今週は毎日つま先上げ運動を10回続ける」「1日500歩多く歩く」など、具体的な目標を決めてみましょう。日記やカレンダーに記録をつけると、達成感も得られやすくなります。家族や友人と一緒に取り組むのも良い方法です。
まとめ:すり足歩行の改善で安全な毎日を手に入れよう
すり足歩行は、年齢を重ねることで誰にでも起こりうる変化です。しかし、日々の意識や生活習慣の工夫、簡単な運動やトレーニングの積み重ねで、リスクを減らし、健康的な毎日を送ることができます。
一人で抱え込まず、家族や専門家の力も借りながら、できることから少しずつ取り組んでみましょう。すり足歩行を予防・改善し、安全で安心な暮らしを続けられるよう、今できることを大切にしていきましょう。