高齢化社会が進む中で、「将来、介護が必要になったらどうしよう」と不安や悩みを抱える方は増えています。特に、できるだけ自分らしく生活を続けたい、家族の負担を減らしたいと考える方も多いのではないでしょうか。
そのために知っておきたいのが、介護保険で利用できるリハビリの仕組みやサービス内容です。この記事では、介護保険のリハビリの基本から、サービスの選び方や利用手続き、日常生活での工夫まで、分かりやすく解説します。
介護保険のリハビリの基本を知ろう

介護保険で受けられるリハビリの仕組みや特徴を知ることで、今後の選択肢が広がります。まずはリハビリサービスの種類や対象者について整理しましょう。
介護保険で利用できるリハビリサービスの種類
介護保険で受けられるリハビリサービスには、主に「通所リハビリテーション(デイケア)」「訪問リハビリテーション」「入所型リハビリテーション」「介護予防リハビリ」の4つがあります。これらは「どこで」「どのような方法で」リハビリを受けるかによって異なります。
たとえば、施設に通って専門的なリハビリを受ける「通所リハビリテーション」や、自宅にリハビリの専門職が訪れてサポートする「訪問リハビリテーション」など、利用者の生活環境や希望に合わせて選択できます。また、要支援の方が対象となる「介護予防リハビリ」もあり、できるだけ介護状態にならないようサポートします。
【主なサービスの種類】
- 通所リハビリテーション(デイケア)
- 訪問リハビリテーション
- 入所型リハビリテーション
- 介護予防リハビリ
このように、状況や目標に応じて適切なサービスを利用することが大切です。
医療保険リハビリとの違いと特徴
医療保険によるリハビリと、介護保険のリハビリは目的や利用できる人、内容が異なります。医療保険のリハビリは、主にけがや病気の治療が中心で、症状が安定するまでの短期間利用が多いです。
一方、介護保険のリハビリは、病気やけがの治療がひと段落した後、日常生活の動作や自立した生活を維持・向上することを目的としています。利用できる期間も比較的長く、生活に密着した支援が受けられます。下記の表に違いをまとめました。
保険種類 | 利用目的 | 主な対象者 |
---|---|---|
医療保険 | 怪我・病気の治療 | 発症~治療初期 |
介護保険 | 生活機能の維持・向上 | 要介護・要支援者 |
この違いを理解しておくことで、必要な時に適切なサービスを選ぶことが可能になります。
介護保険リハビリの対象となる人はどんな人か
介護保険のリハビリは、基本的に「要介護」または「要支援」の認定を受けた方が対象となります。高齢や病気、けがなどによって日常生活に何らかの支障がある方が多く利用しています。
たとえば、「歩くことが不安」「食事や入浴など身の回りのことが難しくなった」「退院後の生活が心配」といった悩みがある方が、リハビリを通してできることを増やしたり、現状を維持したりすることを目指します。また、介護予防が目的の場合は、要支援者や「これから介護が必要になるかもしれない」と感じている方も利用できます。
ご自身やご家族が対象かどうか迷ったときは、市町村の介護保険窓口や地域包括支援センターで相談することをおすすめします。
介護保険リハビリの目的と効果
介護保険のリハビリは、「日常生活の自立」を支えることを大きな目的としています。たとえば、歩く・立つ・トイレに行く・着替えるなど、基本的な動作をスムーズに行えるようサポートします。
これにより、できるだけ自宅で自分らしく暮らし続けることが目指せます。また、リハビリには筋力低下や関節のこわばりを予防する効果もあり、転倒や寝たきりのリスクを減らす助けにもなります。さらに、専門職のアドバイスを受けながら、ご家庭での工夫や家族のサポートを取り入れることで、リハビリの効果を高めることもできます。
介護保険リハビリで選べるサービスの特徴

介護保険のリハビリサービスは、利用場所や方法によって特徴が異なります。ここでは主なサービスの内容や利用方法、メリットについてご紹介します。
通所リハビリテーションデイケアの利用方法
通所リハビリテーション(デイケア)は、日中にご自宅から施設へ通い、リハビリや食事、入浴介助などを受けるサービスです。基本的には、週1回から数回、必要に応じて利用できます。
利用を希望する場合は、担当のケアマネジャーに相談し、ケアプランに組み込んでもらう形が一般的です。その後、施設との見学や面談を経て、利用が開始されます。施設によって送迎サービスがあるため、移動も安心です。
【デイケア利用の流れ】
- ケアマネジャーに相談
- 施設見学・面談
- ケアプランへの組み込み
- 利用開始
通所リハビリでは、集団・個別のリハビリだけでなく、仲間との交流やレクリエーション活動を通じて心身の活性化も図ることができます。
訪問リハビリテーションのメリット
訪問リハビリテーションは、自宅にリハビリの専門職が訪問し、個別に支援を行うサービスです。自宅で安全に生活したい方や、通所が難しい方に向いています。
大きなメリットは、実際の生活環境に合わせたリハビリができることです。たとえば、家の中の段差や浴室、トイレなど、普段困っている動線や場所に対して直接アドバイスがもらえます。また、家族がリハビリの様子を見守り、一緒にサポート方法を学べる点も安心材料です。
【訪問リハビリの特徴】
- 実際の生活環境に合わせた支援
- 家族も一緒にリハビリを学べる
- 通所困難な方でも利用しやすい
このように、訪問リハビリは「今の暮らしを大事にしたい」方にとって心強い選択肢となります。
入所型リハビリテーションの内容
入所型リハビリテーションは、一定期間施設に入所しながら集中的なリハビリを受けるサービスです。自宅での日常生活が難しい場合や、退院後すぐの時期に利用されることが多いです。
施設では、決まったスケジュールで食事や入浴、リハビリが組まれており、専門職が24時間サポートします。個別リハビリはもちろんのこと、日常生活動作を練習する時間も多く設けられています。医師や看護師、リハビリ専門職が連携し、利用者の状態に合わせたケアを行います。
自宅への復帰を目指す場合も、退所前に家の改修アドバイスやご家族への指導が受けられるので、安心して新しい生活をスタートできます。
介護予防リハビリとは何か
介護予防リハビリは、要支援認定を受けた方や、介護が必要となる前段階の方が対象です。できるだけ自分でできることを増やし、将来の介護状態を防ぐことを目的としています。
主な内容は、体操や筋力トレーニング、生活動作の練習などです。集団で行うグループリハビリや、個別のプログラムも組み合わせながら、無理のない範囲で続けやすい工夫がされています。また、介護予防のための知識や生活習慣の見直し、食事アドバイスなども提供されます。
「最近体力の低下が気になる」「転倒が心配」と感じている方は、早めに介護予防リハビリを利用することで、これからの生活に安心が増します。
リハビリを担当する専門職と役割

リハビリサービスを支えるのは、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などの専門職です。それぞれの役割や特徴を知ることで、安心してサービスを利用できるようになります。
理学療法士が行うリハビリの内容
理学療法士は、主に体を動かす力やバランスなど、「身体機能」を向上・回復させるリハビリを担当します。歩行練習や筋力トレーニング、関節の動きを良くする体操などが中心です。
たとえば、「立ち上がるのが大変」「転びやすくなった」などの悩みに対して、その方の筋力や身体の使い方に合わせて、無理なく進められる運動メニューを提案します。さらに、日常生活での動き方や、家の中で安全に移動するコツもアドバイスします。
理学療法士のサポートによって、ご本人が「できること」を増やし、自信を持って生活できるようになることが期待されます。
作業療法士の支援内容と特徴
作業療法士は、「手を使う動作」や「日常の活動」に焦点を当ててリハビリを行います。たとえば、食事や着替え、洗面、トイレなど、毎日の生活で必要な作業ができるようサポートします。
また、趣味や家事、仕事の再開など、生活の幅を広げるための支援も特徴です。ご本人の「やりたいこと」や「大切にしている暮らし方」に寄り添い、その人らしい生活をサポートします。必要に応じて、福祉用具や家の中の環境調整も提案します。
作業療法士の支援は、生活に密着しているため、小さな目標を積み重ねながら自立を目指す方にとって心強い存在です。
言語聴覚士によるリハビリの重要性
言語聴覚士は、「話す」「聞く」「食べる」といったコミュニケーションや飲み込み機能に関わるリハビリを担当します。言葉がうまく出ない、聞き取りにくくなった、食事でむせやすい、といったお悩みに対応します。
たとえば、脳梗塞や認知症の後遺症で言葉が出にくい方に、発声練習や会話トレーニングを行ったり、飲み込みが心配な方には嚥下(飲み込み)訓練や食事形態の工夫を提案します。
言語聴覚士のサポートにより、ご本人が安心して会話を楽しんだり、安全に食事を続けられるようになることが期待されます。
多職種連携がもたらすリハビリの質向上
リハビリの質を高めるうえで大切なのが、多職種の専門家による連携です。理学療法士・作業療法士・言語聴覚士だけでなく、医師や看護師、介護スタッフ、ケアマネジャーなどがチームとなってサポートします。
それぞれの専門知識を活かしながら、ご本人の目標や生活状況に合わせた最適なリハビリ計画を立てることができます。たとえば、転倒予防や食事の工夫、福祉用具の選定なども、各専門職が情報を共有することで、より安全で効果的な支援が可能になります。
このような多職種連携は、ご本人やご家族の安心にもつながり、リハビリの成果を高めるポイントです。
介護保険リハビリの利用手続きと注意点

介護保険リハビリを利用するためには、いくつかの手続きや確認が必要です。スムーズに利用を始めるための流れや費用、注意点について解説します。
介護認定を受けるための流れ
介護保険サービスを利用するには、まず介護認定を受ける必要があります。これは「要介護」「要支援」の度合いを判定する手続きです。
流れは次の通りです。
- 市区町村の窓口に申請
- 調査員による訪問調査
- 主治医の意見書作成
- 介護認定審査会で判定
結果が出るまでには1か月程度かかることが多いですが、緊急の場合は一部サービスを仮利用できる仕組みもあります。認定後は、ケアマネジャーと相談しながら具体的なサービス利用計画を立てていきます。
ケアプラン作成とリハビリ計画の立て方
介護認定を受けた後は、ケアマネジャーが中心となってケアプラン(介護サービス計画)を作成します。ご本人やご家族の希望、課題を確認し、生活全体の目標を設定します。
リハビリを希望する場合は、「歩けるようになりたい」「トイレを自分で済ませたい」など、できるだけ具体的な目標を伝えることが大切です。その目標をもとに、施設や専門職と連携しながら個別のリハビリ計画を作ります。
途中で目標が変わった場合や、状態に変化があった場合も、ケアプランやリハビリ計画は柔軟に見直しが可能です。
サービス利用時の費用と回数制限
介護保険のリハビリサービスは、自己負担1割~3割(所得によって異なります)が原則です。利用できる回数や利用額にも上限があります。
【費用目安(一例)】
サービス種類 | 1回あたり自己負担額(1割負担の場合) |
---|---|
通所リハビリテーション | 約500~1,000円前後 |
訪問リハビリテーション | 約300~500円前後 |
支給限度額を超えると全額自己負担になるため、使いすぎには注意が必要です。ケアマネジャーが限度額や回数の調整もサポートしてくれますので、不安な点は早めに相談しましょう。
医療保険との併用や切り替えのポイント
リハビリは、医療保険と介護保険のどちらかを利用します。入院や治療中は医療保険、それ以降は介護保険の利用が基本です。
切り替えのタイミングは、主治医やケアマネジャーが判断します。併用できる場合もありますが、原則として同じ内容のリハビリを両方で同時に受けることはできません。迷ったときは、担当医やケアマネジャーに確認するのが安心です。
リハビリ効果を最大化するためのコツ
リハビリの効果をしっかり感じるためには、日常生活での工夫や家族のサポート、施設選びも重要です。具体的なコツや事例を紹介します。
家庭でできる生活リハビリの工夫
施設や訪問でのリハビリに加え、毎日の生活の中で「生活リハビリ」を意識することで効果が高まります。生活リハビリとは、日常の動作そのものをリハビリととらえる考え方です。
【家庭でできる工夫】
- 毎日短い距離でも歩く
- 食事や着替えを自分で行う
- 立ち上がりや座る練習を日常に取り入れる
また、できる範囲で家事や趣味を続けることも、心身の活力につながります。無理せず、楽しみながら続けることが大切です。
家族や介護者がサポートできること
家族や介護者のサポートは、リハビリの効果を高める大きな力になります。たとえば、リハビリの内容や目標を一緒に確認したり、日常生活での動作をそっと見守ることが役立ちます。
頑張りすぎを注意したり、小さな進歩を一緒に喜ぶことも大切です。必要に応じて、福祉用具の利用や住環境の工夫を取り入れ、ご本人が安全に自分らしい生活を続けられるよう支援しましょう。
施設選びで重視したいポイント
リハビリ施設を選ぶ際は、ご本人の状態や目標に合っているか、通いやすいか、専門職の体制が整っているかを確認しましょう。
【施設選びのポイント】
- 専門職が在籍しているか
- 送迎や設備が充実しているか
- 見学・体験利用ができるか
事前に見学をしたり、実際にサービスを体験してみることで、安心して決めることができます。
よくある悩みや相談事例と解決策
リハビリを利用する中で、「なかなか効果が感じられない」「本人のやる気が続かない」といった悩みを抱える方も多いです。
そんな時は、専門職と一緒に目標や方法を見直しましょう。また、ご本人が「できた」と感じられるような小さな成功体験を積み重ねることが大切です。さらに、家族も自分の悩みや不安をケアマネジャーや地域包括支援センターなど、専門の窓口に相談することで解決の糸口が見つかります。
まとめ:介護保険のリハビリを上手に使い自分らしい生活を目指そう
介護保険のリハビリサービスは、ご本人やご家族が安心して暮らし続けるための大きな支えです。リハビリの仕組みや専門職の役割を知り、自分に合ったサービスを選ぶことで、できることが広がり自信を持って毎日を過ごすことができるようになります。
今後の生活に不安がある場合も、早めに情報収集や相談を始めることで、より自分らしい暮らしを続けるための選択肢が増えます。皆さまが健やかで穏やかな毎日を送れるよう、介護保険のリハビリを上手に活用しましょう。