認知症で体は元気な高齢者の介護認定はどうなる？申請手続きと介護サービスの選び方

高齢化社会が進む今、認知症や介護は多くの方が直面する大きなテーマです。家族が元気なうちは先のことと思いがちですが、いざというときに「どうしたらよいのか」「どんな支援が受けられるのか」と悩む方も少なくありません。

認知症の方が介護認定を受ける際の流れや、利用できる介護サービスについて知っておくと、急な状況変化にも落ち着いて対応できます。この記事では、認知症と老後の暮らしにまつわる不安や疑問について、分かりやすく解説します。

認知症で体は元気な場合の介護認定はどうなる

認知症があっても身体の機能が保たれている場合、介護認定の基準や手続きがわかりにくいと感じる方も多いでしょう。ここでは、認知症高齢者の介護認定について、特に身体機能が元気な場合のポイントを解説します。

認知症で身体機能が保たれている人の介護認定のポイント

認知症の方でも身体的には元気な場合、「どこまで介護が必要なのか」「認定は受けられるのか」と悩むご家族は多いです。介護認定は、身体の動きだけでなく、日常生活の中での困りごとや支援の必要性も考慮されます。

たとえば「一人で買い物が難しい」「薬を飲み忘れる」など、見た目には元気でも生活面で支援が必要な場合があります。介護認定では、こうした日常生活の様子や支障の程度が重要視されます。身体の元気さだけで判断されるわけではないため、日々の困りごとを具体的に伝えることが大切です。

要介護認定の基準と認知症が与える影響

介護認定は、介護がどれほど必要かを判断するための制度です。主に「要支援」「要介護」といった段階に分かれていますが、認知症がある場合は日常生活での自立度も重視されます。

認知症があることで、記憶や判断力に影響が出て、日々の生活が難しくなることがあります。たとえば、食事や薬の管理、金銭管理などの面で支援が必要かどうかが認定の大きなポイントになります。身体機能が保たれていても、認知症の影響で生活に支障がある場合、認定の対象となることが多いです。

認知症の症状が介護度に反映されにくいケース

認知症の症状が進んでいても、身体機能がしっかりしている場合、介護認定で思うような結果が出ないことがあります。たとえば、物忘れや徘徊などの症状があっても、調査員が訪問した際に普段通りに受け答えできたりすると、実際の困りごとが伝わりにくいことがあります。

また、家族の見守りやサポートが日常的にある場合、「自立している」とみなされてしまい、認定が軽くなる場合もあります。このため、認知症特有の困難さや家族の負担について、きちんと説明することが重要です。必要に応じて、日常の様子を記録しておくとよいでしょう。

介護認定の申請時に注意したいこと

介護認定を申請する際は、普段の生活でどのような困りごとがあるか、できるだけ具体的に伝えることが大切です。たとえば、「火の消し忘れが多い」「夜間に一人で外出しようとする」といった具体例を挙げて説明しましょう。

また、申請時には家族だけでなく、かかりつけ医やケアマネジャーなど、関係者とも連携して伝えるようにしましょう。認知症の方ご本人がうまく説明できない場合も多いので、事前にメモや記録を用意しておくと安心です。日常の困りごとを正確に伝えることで、より適切な認定につながります。

要介護認定の流れと申請手続きの進め方

介護認定を受けるにはどこに申請するのか、どんな書類が必要なのか分からず戸惑う方も多いです。ここでは、申請から認定までの流れと、押さえておきたいポイントを解説します。

要介護認定の申請先と必要書類

要介護認定の申請は、お住まいの市区町村の窓口で行います。地域包括支援センターや福祉事務所でも相談や申請手続きが可能です。申請は、本人だけでなく家族や代理人でもできます。

主な必要書類は以下の通りです。

• 介護保険被保険者証
• 申請書（窓口で記入またはダウンロード可）
• 本人確認書類（健康保険証、マイナンバーカードなど）

申請時には、認知症の診断書が不要な場合も多いですが、かかりつけ医やケアマネジャーへの相談は事前にしておくとスムーズです。申請から結果が出るまで１カ月ほどかかるため、早めの準備がおすすめです。

認定調査の実際と準備しておくべきこと

申請後、認定調査員が自宅等を訪問し、本人への聞き取りや家族からの説明を受けます。この際、日常生活で困っていることや支援が必要な場面について、具体的に伝えることが重要です。

準備としては、以下の点を整理しておくとよいでしょう。

• 普段の様子や困りごとのメモ
• 薬の飲み忘れや徘徊などのエピソード
• 家族の協力体制や介護の負担

事前に箇条書きでまとめておくと、調査当日も落ち着いて対応できます。緊張せず、普段の実態を正直に伝えることを心がけましょう。

主治医意見書の役割とポイント

主治医意見書は、認定調査と並んで重要な資料です。かかりつけ医が、本人の健康状態や認知症の進行度、日常生活での支障などを記載します。これが介護度判定の参考資料となるため、普段の受診時から認知症の症状や困りごとを医師に伝えておくことが大切です。

意見書には、本人の身体状態だけでなく、認知症による生活上の問題（たとえば、意思疎通や金銭管理の難しさなど）も記載されます。主治医との日頃のコミュニケーションが、より適切な認定結果につながります。

認定結果に納得できない場合の対応策

認定結果に疑問がある場合は、不服申し立て（異議申立て）ができます。市区町村の担当窓口に申し出れば、再調査や再審査が行われます。申立て期限は、通知を受け取ってから60日以内が一般的です。

申立ての際は、再度困っていることや支援の必要性を具体的に伝えることが大切です。新たなエピソードや医師の診断書を用意することで、再審査がより適切に行われる可能性があります。納得できないままにせず、まずは相談窓口に気軽に相談してください。

認知症高齢者が受けられる介護サービスの種類

介護認定を受けると、さまざまな介護サービスが利用できるようになります。自宅での支援から施設利用まで、状況に応じた選択肢をご紹介します。

在宅で利用できる主な介護サービス

在宅介護では、本人が住み慣れた自宅で生活を続けながら、必要なサービスを受けることができます。主なサービスは以下の通りです。

• 訪問介護（ヘルパーによる日常生活の支援）
• 訪問看護（看護師による健康管理や医療的ケア）
• 訪問入浴サービス

その他、配食サービスや見守りサービスなども利用できます。在宅サービスは、家族の負担軽減にもつながるため、必要に応じて組み合わせて利用するのがポイントです。

通所サービスやショートステイの活用例

通所サービス（デイサービス）は、日中だけ施設に通って、入浴や食事、リハビリ、レクリエーションなどを受けられるサービスです。家族が仕事や用事で家を空ける際にも活用できます。

また、ショートステイ（短期入所）は、数日から数週間、施設に宿泊して介護を受けるサービスです。家族が休養したいときや急な用事ができたときにも利用されます。これらのサービスを組み合わせることで、在宅介護の負担を無理なく調整できます。

施設入所で利用できる介護サービスの特徴

自宅での生活が難しくなった場合は、介護施設への入所も選択肢の一つです。主な施設と特徴は次の通りです。

施設種類	主な特徴	介護度の目安
特別養護老人ホーム	24時間の生活支援・介護	要介護3以上
介護老人保健施設	リハビリ・在宅復帰支援	要介護1以上
グループホーム	少人数で家庭的な環境	要支援2以上

それぞれの施設で受けられるサービスや入所条件が異なるため、本人や家族の希望、介護度に合わせて選ぶことが大切です。

福祉用具や住宅改修支援の利用方法

介護認定を受けると、福祉用具の貸与や購入、住宅改修も保険で利用できます。たとえば、手すりの取り付けや段差の解消、車いすや介護ベッドのレンタルなどです。

利用の流れは、担当のケアマネジャーに相談し、必要な手続きを進めるだけです。住宅改修は介護保険の範囲内で一定額まで助成されるので、負担を抑えて安全な住環境を整えることができます。

介護認定を受けるための日常生活自立度のチェックと対策

認知症のある方が介護認定を受ける際、「日常生活自立度」は重要な判断材料です。ここでは、自立度のチェックポイントや、評価を受けるときの工夫についてまとめます。

認知症高齢者の日常生活自立度判定基準とは

日常生活自立度は、認知症の方がどの程度自立して生活できているかを示す指標です。厚生労働省が定める基準では、本人の行動や介護者の支援内容などによってA～Mのランクに分かれています。

この基準では、「家族や周囲の助けがあれば自立できる」のか、「見守りや支援がなければ危険がある」のかなど、日常の具体的な行動に注目します。判定時には、本人の普段の様子を正確に伝えることが大切です。

認定調査で伝えるべき家族の視点と具体例

認定調査では、本人だけでなく家族の視点も重要です。たとえば、「一人で外出すると迷子になる」「夜間に何度も起きてしまう」など、家族だからこそわかる困りごとを伝えましょう。

具体的には以下のようなポイントに分けて説明すると伝わりやすくなります。

• 食事や服薬の管理が自分でできるか
• 火の始末や戸締りが難しいか
• 金銭管理や買い物に支障があるか

こうしたエピソードを交えて話すことで、調査員にも実態が伝わりやすくなります。

普段の様子を記録するコツ

介護認定に向けては、普段の様子を日記のように記録しておくと役立ちます。たとえば、食事の様子や困った行動、見守りが必要だった時間などを簡単にメモします。

記録のコツは、できるだけ「いつ」「どんなことが」「どのくらいの頻度で」起こるかを具体的に書くことです。家族が交代で介護している場合は、それぞれの視点で記録を残すのもおすすめです。調査時や主治医への説明に活用できます。

かかりつけ医との連携が認定結果に及ぼす影響

かかりつけ医は、認知症の進行具合や日常生活での困難について客観的に診断できる存在です。普段から定期的に受診し、困っていることや変化を共有しておくと、主治医意見書の内容もより実態に近いものとなります。

また、医師のアドバイスを受けて介護の工夫や見守りの方法を見直すこともできます。医師との連携は、認定の適正化だけでなく、本人の安心や安全な暮らしにもつながります。

認知症と老後の安心な暮らしのためにできること

認知症の方が安心して暮らしていくためには、家族や周囲の理解、適切なサポートが欠かせません。ここでは、日々の介護のコツや、長期的な備えについてご紹介します。

家族が知っておきたい認知症介護のポイント

認知症介護では、本人の気持ちや尊厳を大切にすることが基本です。急な変化や否定的な言葉は混乱を招きやすいため、穏やかに対応することを心がけましょう。

また、介護する家族自身も無理をしないことが大切です。悩みや不安を一人で抱えず、ケアマネジャーや専門家に相談したり、地域の家族会やサポートグループに参加するのもおすすめです。

進行段階ごとのサポート方法

認知症は、進行段階によって必要な支援が変わります。初期は見守りや生活習慣の工夫で自立を支え、中期以降は安全確保や本人の安心感がより重要になります。

たとえば、

• 初期：カレンダーやメモの活用、服薬管理サポート
• 中期：日中の見守り、危険な行動の防止
• 進行期：24時間体制の見守りや医療的ケア

このように段階に応じたサポートを心がけることで、本人も家族も安心できる生活が実現しやすくなります。

介護施設・老人ホーム選びの注意点

施設を選ぶ際は、本人の状態や希望をふまえ、見学や体験入所を行うことが大切です。入所基準、費用、スタッフ体制、医療連携の有無なども確認しましょう。

施設選びのポイントは次の通りです。

• 本人の性格や生活リズムに合うか
• 家族の面会がしやすいか
• 緊急時の対応体制が整っているか

複数の施設を比較し、納得できるまで情報を集めることをおすすめします。

相談窓口や支援制度の活用法

認知症や介護に関する相談は、地域包括支援センターや認知症初期集中支援チームなどで受け付けています。公的な窓口を活用することで、最新の支援制度や地域のサービスを案内してもらえます。

また、介護保険や障害福祉サービス、成年後見制度といった支援制度も状況に応じて利用できます。困ったときは一人で抱えず、早めに相談機関を利用することが重要です。

まとめ：認知症でも自分らしく暮らせる介護認定と老後の備え

認知症があっても、その人らしく安心して暮らすためには、適切な介護認定とサービス利用、そして家族や医療機関との連携が欠かせません。早めに準備を始め、日常の困りごとを具体的に伝えることで、より良い支援につながります。

家族だけで抱え込まず、相談窓口や地域のサービスを上手に活用しましょう。認知症の方も家族も、安心して過ごせる環境づくりが老後の暮らしを支えてくれます。