親や家族の介護が必要になったとき、多くの方が「仕事と両立できるだろうか」と不安を感じます。特に公務員の方は、制度が複雑で分かりにくい部分も多いと感じているかもしれません。
本記事では、公務員が利用できる介護休暇制度について、基礎から実際の取得方法、給与面、職場復帰まで詳しく解説します。介護と仕事の両立に悩む方に、実践的な情報と安心をお届けします。
公務員の介護休暇とはどんな制度か

公務員が利用できる介護休暇とは、家族のケアが必要なときに仕事を一時的に休むことができる制度です。制度の概要や必要性について、順に見ていきましょう。
介護休暇の基本的な仕組み
介護休暇は、家族の介護や看護が必要な場合に、公務員が一定期間仕事を休むことができる制度です。休暇は日単位や時間単位でも取得できるため、状況に合わせて柔軟に利用できます。
たとえば、急な病気や、通院の付き添いなど短時間だけ仕事を抜けたい場合にも活用しやすい仕組みです。通常の有給休暇とは別枠で利用できる点も特徴です。
介護休暇の目的は、介護と仕事の両立を支援し、精神的・身体的な負担を軽減することにあります。また、職場での理解や協力を得やすくなるよう、規則として整えられています。
介護休暇と介護休業の違い
介護休暇と似た言葉に「介護休業」がありますが、この2つには明確な違いがあります。介護休暇は短期間(たとえば1日単位や時間単位)、一時的な休みを取得するための制度です。一方、介護休業は、家族の介護が長期間に及ぶ場合に一定期間まとまった休みを取れる制度です。
下記の表に、両者の主な違いをまとめました。
制度名 | 取得単位 | 主な対象 |
---|---|---|
介護休暇 | 1日・時間単位 | 通院や一時的な介護など短期間 |
介護休業 | 連続日数 | 長期的な介護が必要な場合 |
このように、家族の状況や自身の勤務形態によって、どちらの制度を利用するか選択することが大切です。
介護休暇が必要とされる背景
高齢化社会が進む中、家族の介護問題は誰にとっても身近な課題となっています。かつては家族で支え合うのが主流でしたが、共働き世帯の増加や地域社会の変化で、仕事と介護を両立する必要性が高まりました。
そのため、制度として介護休暇が整備され、公務員も安心して家族の介護に向き合えるようになりました。仕事と家庭の両立が社会全体のテーマとなり、働く人の生活を支える役割が期待されています。
公務員が取得できる介護休暇の種類
公務員が取得できる介護休暇には、基本として以下の2つがあります。
- 通常の介護休暇:家族1人につき年間5日まで(2人以上の場合は10日まで)
- 時間単位介護休暇:1日のうち、一部の時間だけ休む形式
また、配偶者や親、子どもだけでなく、同居して生計を共にする兄弟姉妹や祖父母も対象となるケースもあります(所属先によって異なる場合あり)。
自分の状況や家族構成に合わせて、どの種類の休暇が使えるかを確認しておくことが大切です。
介護休暇の取得条件と手続き

介護休暇を利用するためには、取得できる家族の範囲や必要な書類などいくつかの条件があります。実際の手続きの流れとともに詳しく説明します。
介護休暇の対象となる家族の範囲
介護休暇の対象となる家族は、本人の配偶者・父母・子どもが基本ですが、一定の条件を満たせば同居の兄弟姉妹や祖父母、孫なども認められる場合があります。
具体的には、下記のような家族関係が対象です。
- 配偶者(内縁関係も含む)
- 父母(養父母も対象)
- 子ども(養子も含む)
- 祖父母・孫・兄弟姉妹(同居かつ生計を共にしている場合)
職場によっては細かい条件が異なる場合があるため、事前に所属部署の人事担当に確認することをおすすめします。
公務員が介護休暇を取得できる条件
介護休暇を取得できる条件には、介護が必要な家族が「常時介護を要する状態」であることが求められます。たとえば、ケガや病気で自力生活が難しい状態や、医師から介護が必要と診断された場合が該当します。
また、介護する家族が日常的に支援を必要としており、短期間の看護や付き添いの目的で取得されます。仕事上の都合や自分の都合だけでは取得できないため、正確な理由を明示することが大切です。
申請時に必要な書類と手順
介護休暇を申請する際には、職場所定の申請書が必要となります。多くの場合、以下の流れで手続きを進めます。
- 申請書をダウンロードまたは人事担当から入手
- 必要事項(取得理由、期間、対象家族など)を記入
- 医師の診断書や介護認定証が必要な場合は添付
- 所属長へ提出し、承認を受ける
申請書類の内容や提出期限、追加書類の有無は職場ごとに異なることがあるため、事前確認が重要です。早めの相談・準備を心掛けましょう。
介護休暇の取得可能日数と単位
公務員の介護休暇は、年度ごとに家族1人あたり5日まで取得できます。家族が2人以上介護を必要とする場合は、合計10日まで取得可能です。
また、休暇は1日単位や時間単位(たとえば半日や2時間だけ)で取得できるため、介護のスケジュールや通院の予定などに柔軟に対応できます。
仕事の繁忙期やチームの状況を考慮しながら、計画的に取得することがポイントです。
介護休暇取得中の給与や手当の実際

介護休暇を取得すると給与や手当はどうなるのか、不明点や不安を感じる方も多いでしょう。具体的にどのような制度なのか、よくある疑問も含めて整理します。
介護休暇中の給与支給の有無
介護休暇中の給与は、原則として無給となるケースが多いです。ただし、職場によっては有給扱いとなる場合や、特別な事情が認められた場合は一部支給されることもあります。
給与の取り扱いは公務員の職種や勤務先によって異なることがあるため、詳細は所属先の人事担当に確認することが必要です。
無給の場合、家計への影響を事前にシミュレーションしておくと安心です。
介護休暇と有給休暇の取り扱い
介護休暇が無給の場合は、有給休暇(年次休暇)を利用する選択肢もあります。有給休暇を利用すれば、給与が支給されるため、収入面で不安がある場合はこちらを優先的に使う方も多いです。
また、介護休暇と有給休暇の併用も可能です。たとえば、急な介護が必要な場合はまず介護休暇を使い、日数が不足したときに有給休暇を利用するなど、柔軟な運用が認められています。
職場ごとの規定を確認し、自分に合った方法を選びましょう。
介護休業給付金との違い
「介護休業給付金」とは、長期間の介護休業を取得した場合に支給される手当です。「介護休暇」とは性質が異なり、介護休暇中は原則給付金の対象外となります。
下記に、両者の違いを整理しました。
項目 | 介護休暇 | 介護休業給付金 |
---|---|---|
支給の有無 | 原則なし | 雇用保険から支給される |
取得期間 | 短期間 | 連続93日まで取得可 |
対象となる休み | 一時的・短期 | 長期的な休業 |
このように、休暇と給付金では申請方法や対象が異なるため、注意が必要です。
給与に関するよくある疑問
介護休暇を取得した場合、「ボーナスへの影響は?」「社会保険料はどうなる?」などの疑問がよく寄せられます。基本的には、短期間の無給休暇であればボーナスや社会保険料には大きな影響がない場合が多いです。
しかし、取得日数や就業規則によって扱いが異なるため、事前に人事担当へ確認し、納得した上で休暇を申請することが大切です。
不安な点は遠慮せず相談しましょう。
公務員の働き方と介護支援制度の活用法

介護と仕事を両立するためには、介護休暇だけでなく多様な働き方や支援制度を上手に活用することが重要です。具体的な制度やその活用法を紹介します。
勤務時間の調整や短縮勤務の制度
公務員には、勤務時間を柔軟に調整できる「時差出勤」や「短時間勤務」といった制度があります。たとえば、朝の通院付き添いのために始業時間を遅らせたり、夕方早めに退庁することが可能です。
こうした制度を利用すれば、毎日の介護負担を減らしつつ、通常業務にも支障をきたしにくくなります。
実際に利用する場合は、所属長や同僚と事前に相談し、業務配分を調整してもらうことが大切です。
テレワークや在宅勤務の利用方法
近年では、公務員の間でもテレワークや在宅勤務が広がっています。介護のために自宅で仕事をしたい場合、こうした制度を活用することで通勤時間を短縮でき、万が一のときにもすぐに対応できます。
テレワークには下記のメリットがあります。
- 通勤の負担が減る
- 家族の急変時にも対応しやすい
- 介護サービス事業者との連絡が取りやすい
ただし、テレワークが認められる部署や職種には限りがあるため、導入状況を事前に確認しましょう。
超過勤務や深夜勤務を避ける仕組み
介護と仕事の両立を考えると、残業や深夜勤務を減らすことが重要です。公務員には、介護を理由に超過勤務や深夜勤務を免除してもらえる制度があります。
たとえば、介護を理由に一定期間は定時退庁とし、残業を減らす配慮がなされます。
必要に応じて職場に相談し、自分のライフスタイルに合った勤務体制を整えてもらいましょう。
介護休暇以外の両立支援制度
介護休暇以外にも、公務員にはさまざまな両立支援制度があります。
- 介護短時間勤務制度
- 介護のためのフレックスタイム制
- 介護相談窓口の設置
これらの制度を上手に活用することで、仕事に支障をきたすことなく、必要な介護を行うことができます。
自分の状況に合わせて、どの制度が使えるかを定期的に見直すのがおすすめです。
介護休暇取得時の注意点と成功のコツ
介護休暇をスムーズに取得し、仕事と家庭の両立を成功させるためには、事前の準備や周囲との連携が大切です。具体的な注意点やコツをまとめました。
職場への相談と情報共有のポイント
介護休暇を取得する際は、早めに職場の上司や同僚に相談することがポイントです。取得予定や理由を分かりやすく伝えることで、周囲の理解と協力が得やすくなります。
また、業務の引き継ぎや、休暇中の連絡体制なども事前に決めておくと安心です。
急な予定変更にも対応できるよう、柔軟な姿勢で臨みましょう。
家族や外部サービスとの連携方法
介護は一人で抱え込まず、家族や外部の介護サービスと連携することが大切です。たとえば、介護認定を受けた方なら地域包括支援センターやケアマネジャーに相談し、利用できるサービスを確認しましょう。
また、家族間で介護分担やシフトを決めることで、負担を軽減しやすくなります。
無理せず、周囲の協力を得ながら進めることが長続きのコツです。
介護休暇制度を上手に活用するコツ
介護休暇は計画的に取得することが成功のポイントです。家族の状況や通院スケジュールに合わせて休暇を分散させることで、急なトラブルにも対応しやすくなります。
また、自分の心身のケアも忘れず、必要に応じてカウンセリングや相談窓口を活用しましょう。
制度の内容を定期的に見直すことも大切です。
介護休暇取得後の職場復帰の流れ
介護休暇から職場に復帰する際は、復帰予定日を事前に伝え、必要に応じて職場復帰面談を受けることが一般的です。復帰直後は業務のリハビリ期間として、無理のない範囲からスタートするとスムーズです。
復帰後もしばらくは介護と仕事の両立が続くため、必要に応じて勤務時間の調整や短縮勤務を利用しましょう。
職場や家族、外部サービスと連携しながら、無理のない働き方を心がけてください。
まとめ:公務員が介護休暇を賢く活用し仕事と家庭を両立するために
介護は突然始まることが多く、仕事との両立に悩む場面も少なくありません。公務員には、介護休暇をはじめ多様な両立支援制度が用意されています。
これらの制度を正しく理解し、必要に応じて計画的に活用することが、仕事と家庭の両立を実現する第一歩です。
職場や家族、外部機関と適切に連携しながら、自分と家族にとってベストな選択をしていきましょう。
介護休暇は「一時避難」ではなく、暮らしを支える大切な選択肢の一つです。不安を感じたときは、遠慮せず相談し、制度を賢く活用してください。