家族の介護が必要になったとき、仕事と両立できるか悩む方は多いものです。経済的な不安や、制度が複雑で分かりにくいという声もよく耳にします。なかでも、介護休業給付金は「もらえなかった」「条件が分からない」といった不安や疑問がつきものです。
この記事では、介護休業給付金がもらえない理由やその対策、受給条件、申請方法、最近の制度改正情報まで、やさしく解説します。安心して介護と仕事を両立させるためのポイントを一緒に確認していきましょう。
介護休業給付金がもらえない理由とその対策

介護休業給付金を申請したものの「受け取れなかった」というケースは少なくありません。なぜもらえないのか、その理由や背景を正しく理解し、対策を立てることが大切です。
介護休業給付金とは何か理解する
介護休業給付金とは、家族の介護のために一定期間仕事を休む際、生活の安定をはかるために支給される公的な給付金です。これは雇用保険に加入している労働者が、一定の条件を満たすことで申請できます。
この制度を利用することで、無給の休業による金銭的負担を軽減できる仕組みになっています。ただし、申請には雇用保険の加入期間や就業形態、家族の状態など細かな条件があるため、事前によく確認しましょう。万一条件から外れてしまうと、給付金を受給できない場合があります。
介護休業給付金の受給資格の基本条件
介護休業給付金を受け取るには、いくつかの基本条件があります。主な条件は、雇用保険に加入しており、かつ直近2年間で一定以上働いていることです。また、介護が必要な家族がいる場合に限られます。
たとえば、パートやアルバイトの場合でも雇用保険に加入していれば申請できますが、短期契約や日雇いなど条件に該当しない場合もあります。さらに、休業期間中の賃金が多い場合や、退職予定の場合も対象外となります。各条件をしっかり把握しておくことで、トラブルを未然に防げます。
もらえない主なケースとその背景
給付金がもらえない主な理由には、下記のようなケースがよく見られます。
- 雇用保険の加入期間が足りない
- 介護休業の対象となる家族に該当しない
- 介護休業中に他の仕事で多く働きすぎた
- 休業中の賃金が高い(休業前の80%以上)
- 既に退職が決まっている
- 申請書類や手続きに不備がある
背景として、制度や条件が細かく決められているため、誤解や見落としが生じやすいことが挙げられます。事前に自分の状況と制度の条件をしっかり照らし合わせ、必要なら職場や専門窓口に相談することが大切です。
介護休業給付金がもらえない時の相談先
もし給付金がもらえなかった場合、まずは会社の総務や人事担当に理由を確認しましょう。それでも不明点が残る場合は、最寄りのハローワークが相談窓口となっています。
また、社会保険労務士や地域の無料法律相談窓口を利用するのも方法です。自分一人で悩まず、専門家や自治体サービスを活用して、適切な手続きを進めることが大切です。
介護休業給付金の受給条件と対象者の範囲

介護休業給付金をもらうには、「誰が」「どのような条件」で対象となるかを正しく理解することが重要です。自身や家族の状況が条件に当てはまるか、確認してみましょう。
介護休業前2年間の雇用保険加入要件
介護休業給付金を受給するには、介護休業の開始日前2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算12か月以上あることが必要です。ここでの「被保険者期間」とは、1か月に11日以上働いていた月を指します。
注意したいのは、休職や長期欠勤で出勤日数が少ない月はカウントされない点です。派遣やパートタイムでも条件を満たせば対象ですが、短期雇用や契約が途切れていると対象外となるため、事前に勤務記録を確認しておくと安心です。
介護休業中の働き方と賃金要件
介護休業中に一部だけ働く場合や、会社から賃金が支給される場合もあります。このとき、休業中に受け取る賃金が休業開始前に比べて80%未満であることが、給付金受給の条件です。
もし休業中も高額な賃金が支払われる場合は、給付金の支給対象外となります。また、他の職場で働きすぎると「働いた」と見なされ、基準を超えると受給できなくなります。介護と両立するためにも、会社とよく相談しながら計画を立てることが重要です。
支給対象となる家族の範囲
介護休業給付金が支給される「家族」の範囲は法律で定められています。対象となるのは、配偶者(事実婚含む)、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫です。
下記は対象となる家族の例です。
対象になる家族 | 対象外の家族 |
---|---|
配偶者 | おじ・おば |
父母・配偶者の父母 | いとこ |
子・孫 | 友人・知人 |
同居や扶養の有無は問いませんが、介護が必要であることが条件です。「遠方に住む家族の介護」も対象となる場合があるため、詳細は窓口で確認しましょう。
「常時介護を必要とする状態」の具体的な基準
支給対象となる家族が「常時介護を必要とする」とは、日常生活において継続的な支援が必要な状態を指します。たとえば、食事や入浴、排せつなど基本的な生活動作が一人でできない場合です。
具体的には、要介護2以上の認定を受けているケースが該当することが多いですが、認定がなくても医師の診断書などで判断されることもあります。判断が難しいときは、医療機関や自治体の介護相談窓口に相談することで、正確な情報を得られます。
介護休業給付金の申請方法と手続きの流れ

申請の手続きは複雑そうに感じますが、必要な書類や流れを知っておけば落ち着いて進めることができます。ポイントを押さえて、スムーズな申請を目指しましょう。
必要な書類と準備しておくべきもの
介護休業給付金を申請するには、いくつかの書類が必要です。主な書類は次の通りです。
- 介護休業給付金支給申請書(会社が用意)
- 介護が必要な家族の状況を証明する書類(介護認定通知書や医師の診断書など)
- 賃金台帳や出勤簿の写し
- 雇用保険被保険者証
申請書類は会社が協力してくれることが多いですが、家族の介護状態を証明する書類や本人確認書類は事前に準備しておくと安心です。必要書類が足りないと手続きが遅れることもあるため、早めに揃えておきましょう。
申請先と手続きの進め方
申請は、原則として勤務先を通じて、管轄のハローワークに行います。本人が直接ハローワークに行く場合もありますが、多くの場合は会社の人事担当者がまとめて提出します。
不明点があれば、会社の担当者やハローワークの窓口で確認しながら進めると安心です。申請後、ハローワークが内容を審査し、問題がなければ給付金の支給が決まります。
申請期限と注意すべきスケジュール
申請期限は「介護休業を開始した日から2か月以内」とされています。期限を過ぎてしまうと、原則として受給できなくなりますので、スケジュール管理がとても重要です。
下記のような流れで進めるとスムーズです。
- 休業開始の1か月前:会社に相談し準備開始
- 休業開始時:必要書類の確認と収集
- 休業開始後2か月以内:ハローワークへ申請
早め早めの行動が、トラブル防止につながります。
申請後の流れと支給までの期間
申請が受理されると、ハローワークが内容を確認し、問題がなければ給付金の支給決定通知が届きます。その後、指定した口座に振り込まれるまでには、通常1か月程度かかります。
しかし、書類に不備がある場合や追加書類提出を求められると、さらに時間がかかることもあります。支給時期が遅れそうなときは、ハローワークに問い合わせて進捗を確認しましょう。
介護休業給付金をもらえない場合の具体例と注意点

「なぜもらえないのか」と疑問に思う場合、具体的な事例を知っておくことが大切です。よくあるケースや注意点を押さえて、無駄のない申請を心掛けましょう。
介護休業期間中に働きすぎた場合
介護休業中でも、会社から一部業務を依頼されることや、他の職場で働く場合があります。しかし、働きすぎると「介護休業中」と見なされず、給付金が支給されないことがあります。
特に、他の事業所での就労や副業をしている場合は、ハローワークが「十分な介護時間を確保できていない」と判断し、受給が認められないことがあります。仕事内容や働いた時間にもよりますので、事前に会社やハローワークに相談しておくと安心です。
賃金が休業前の80%以上になった場合
介護休業中の賃金が、休業前の賃金の80%以上となる場合は、介護休業給付金は支給されません。これは「休業による生活への影響が少ない」と判断されるからです。
たとえば、会社が独自の制度で賃金を多く補償している場合なども該当します。賃金の計算方法や基準が分からない場合は、会社の担当者やハローワークに確認し、計画的に休業を取得してください。
退職予定や復職しないケース
介護休業給付金は「職場復帰」が前提の制度です。そのため、休業期間終了後に退職することが決まっていたり、すでに退職を申し出ている場合は、原則として給付金は支給されません。
やむを得ず退職を検討している場合も、まずは会社やハローワークに相談し、今後の働き方についてもよく話し合うことが大切です。
他の給付金との併用制限
介護休業給付金は、同じ期間に「雇用保険の基本手当(失業給付)」など、他の一部の給付金と同時に受給することはできません。重複が発覚すると、返還を求められる場合があります。
以下のような併用不可の代表例です。
受給できない組み合わせ | 例 |
---|---|
介護休業給付金+失業給付 | 退職して失業手当も申請 |
介護休業給付金+育児休業給付金 | 同じ期間に2つの休業取得 |
申請前に、すでに受けている給付金や予定している手当がないか、よく確認しておくことが重要です。
介護休業給付金の制度利用におけるよくある疑問と最新情報
介護休業給付金は便利な制度ですが、細かな疑問や最新の法改正も気になるところです。よくある質問や、今後の変更点についてもチェックしておきましょう。
93日の数え方や分割取得のポイント
介護休業給付金は、対象家族1人につき「通算93日」まで取得できます。連続して取得する必要はなく、最大3回まで分割して取得できるのが特徴です。
たとえば、最初は30日間、次に40日間、最後に23日間というように分けて申請できます。日数の数え方は、休日や祝日も含めて連続した日数で計算されます。分割取得する際は、会社と事前に相談し、計画的に利用しましょう。
複数の家族で給付金を受け取れるか
介護が必要な家族が複数いる場合、それぞれについて介護休業と給付金を利用することができます。ただし、同時に複数人分の休業を取得することはできません。
たとえば、父親の介護で93日取得し、その後母親の介護でさらに93日取得することが可能です。同時に2人分の給付金を受け取ることはできませんが、時期をずらして取得することで、複数の家族に対応できます。
2週間未満の介護休業でも給付金はもらえるか
法律上は2週間未満の休業でも介護休業給付金の申請は可能です。ただし、実際には「1日単位」で分割取得する場合、会社側の規定や手続きの都合によっては申請に制限があることもあります。
短期間の休業を希望する場合は、会社の人事担当やハローワークに早めに相談し、必要な手続きや注意点を確認しておきましょう。
2025年施行予定の法改正のポイント
2025年には介護休業給付金に関する法改正が予定されています。主なポイントは、給付率や対象範囲の見直し、手続きの簡素化などです。
たとえば、給付率が現在の67%から引き上げられる可能性や、対象となる家族の範囲拡大が検討されています。また、申請手続きがデジタル化され、より簡単に申請できるようになる見通しです。最新情報は厚生労働省のホームページやハローワークで随時確認しましょう。
まとめ:介護休業給付金を賢く活用し安心して介護と仕事を両立しよう
介護と仕事の両立には、経済的な支援や制度を有効活用することがとても重要です。介護休業給付金は、条件や手続きを正しく理解し活用することで、精神的・経済的な負担を和らげる助けとなります。
給付金がもらえない理由や注意点を事前に把握し、必要な準備や相談窓口を知っておくことで、トラブルを避けて安心して申請できます。また、今後の法改正や制度の変更にも目を向け、最新情報をしっかり確認しておきましょう。
介護と仕事を無理なく両立できるよう、ご自身や家族の状況に合わせて、制度を賢く活用していくことが大切です。