高齢化社会が進む中で、ご自身や家族の将来の暮らしについて不安を感じる方は多いのではないでしょうか。特に、在宅介護や老後の生活費に関する悩みは尽きません。
介護の費用や支援制度について知っておくことで、将来に向けた安心や準備につながります。
この記事では、在宅介護の費用の全体像や相場、費用を抑えるための工夫や制度などを、できるだけ分かりやすくご紹介します。
在宅介護の費用が気になる方へ全体像と相場をわかりやすく解説
親や自分の介護が必要になったとき、まず気になるのが「いくらかかるのか」という点です。ここでは、在宅介護の費用の全体像と相場を丁寧に解説します。
介護費用は要支援要介護度によって変わる
介護にかかる費用は、必要な支援や介護の度合いによって大きく変わります。要支援1・2は比較的軽度のサポートが必要な状態、要介護1～5は介護の手間が増える状態です。
要介護度が高くなるほど、利用できるサービスの内容が広がり、費用も高くなる傾向があります。たとえば、要支援1の場合は週に数回の訪問型サービスが中心ですが、要介護5になると日常的な訪問介護や通所サービス、さらには短期入所なども利用することが多くなります。
介護度によって月額の費用目安も異なります。表にまとめると以下のようになります。
| 要介護度 | 月の自己負担目安（1割負担の場合） |
| ——– | ————————– |
| 要支援1 | 約5,000～10,000円 |
| 要支援2 | 約10,000～20,000円 |
| 要介護1 | 約15,000～25,000円 |
| 要介護5 | 約35,000～50,000円 |
もちろん、利用するサービスの内容や回数によって費用は増減します。計画的にケアプランを立てて、適切なサービスを選ぶことが重要です。
在宅介護と施設介護の費用を比較してみよう
在宅介護と施設介護では、かかる費用や費用の内訳が異なります。在宅介護は自宅での生活を維持しながら、必要なサービスだけを利用する形が一般的です。一方、施設介護は住居や食事、日常のケアがすべて含まれており、生活費全体が一括管理されているのが特徴です。
在宅介護の月額費用は、介護保険を利用したサービスの自己負担分や日用品費などを合わせて、平均で4～7万円程度が目安とされています。これに対し、施設介護は入居一時金が必要な場合もあり、月額費用も15～30万円ほどかかることが多いです。
| 介護の形 | 初期費用 | 月額費用の目安 |
| ——– | ——– | ———— |
| 在宅介護 | ほぼ不要 | 4～7万円 |
| 施設介護 | 数十万円～ | 15～30万円 |
このように、在宅介護は初期費用が抑えられる一方、施設介護は生活全般の安心感が得られる反面、費用が高くなる傾向があります。それぞれの特徴を理解し、家族の状況に合った選択を考えましょう。
在宅介護にかかる初期費用と月額費用の違い
在宅介護では、最初に大きな費用が発生することは比較的少ないです。福祉用具の購入や住宅改修が必要な場合に初期費用が発生することがありますが、多くは介護保険を利用して一部のみ自己負担となります。
月額費用については、介護サービス利用料やオムツ代、食費、光熱費の増加分など、さまざまな項目が積み重なります。初期費用は一時的な出費ですが、月額費用は継続して発生するため、長期的な家計への影響を考えることが大切です。
費用の内訳や負担割合は、事前にケアマネジャーに相談して確認しておくと安心できます。
介護費用の平均的な目安と家計への影響
在宅介護を続ける場合、月にかかる総費用の平均は5～8万円程度と言われています。これは、介護サービス利用料の自己負担分だけでなく、食事や日用品、医療費、光熱費なども含めた金額です。
この費用は、年金の範囲内でまかなうことが難しい場合もあり、家計に負担がかかることがあります。特に、要介護度が上がるとサービスの利用頻度が増すため、負担も増えていきます。
家族全体の収入や支出を見直し、将来を見据えた計画的な資金管理が求められます。
在宅介護で発生する主な費用項目を知ろう
在宅介護では、介護サービス以外にもさまざまな費用が発生します。どのような支出があるかを把握して、家計の管理に役立てましょう。
介護サービス利用料の内訳を理解する
在宅介護で利用するサービスには、訪問介護（ヘルパー）、デイサービス（通所介護）、訪問看護、福祉用具のレンタルなどがあります。これらは介護保険を利用できるものが多く、自己負担は原則1～3割です。
たとえば、訪問介護では1回につき数百円から千円程度の自己負担になります。デイサービスは1回あたり1,000円前後が目安です。利用頻度や組み合わせによって費用は異なりますので、ケアプランに基づいて無理のない範囲でサービスを選びましょう。
また、介護保険でカバーできないサービス（掃除や買い物の代行、通院の付添いなど）は全額自己負担となる場合があります。どのサービスにどれくらい費用がかかるか、事前に確認しておくと安心です。
介護食や日用品にかかる費用のポイント
介護食は、かむ力や飲み込む力が弱くなった方のために、やわらかく加工された食品やとろみ剤などが市販されています。一般の食事よりもやや割高になることが多いですが、安全に食事を楽しむためには欠かせません。
また、日常的に使うオムツや介護用シーツ、手袋などの日用品も毎月の出費に含まれます。これらは消耗品なので、まとめ買いや通販の定期便を活用することで少しでも費用を抑えることができます。
介護食や日用品は支出の見落としがちな部分なので、月ごとにどれくらい必要かを把握し、予算に組み込むことが大切です。
光熱費や水道費など日常生活費の増加
在宅介護では、介護者が家にいる時間が増えることで、電気・ガス・水道の使用量が増えやすくなります。たとえば、冬場の暖房や夏場の冷房を使う時間が長くなり、入浴や洗濯の回数も増えることが一般的です。
このように、介護を始める前よりも光熱費や水道代が毎月数千円から1万円程度増えるケースも見られます。
家計の中でどの費用が増えているかを毎月見直し、無理なく節約できるところがあれば工夫してみましょう。
福祉用具のレンタル購入費用の選び方
介護ベッドや手すり、車いすなどの福祉用具は、購入だけでなくレンタルも可能です。介護保険を利用すれば、必要な用具を1～3割の自己負担で借りることができます。
長期間使うものや、個人の身体状況に合わせてカスタマイズが必要な場合は購入を検討することもありますが、期間限定の利用や状態が変化しやすい場合はレンタルのほうが経済的です。
選び方に迷う場合は、福祉用具専門相談員に相談すると良いでしょう。
| 用具 | レンタル目安（月） | 購入目安 |
| ———- | —————- | ————- |
| 介護ベッド | 1,000～2,000円 | 5～10万円 |
| 車いす | 500～1,000円 | 3～5万円 |
用途や利用期間を考慮して、無駄のない選択を心がけることがポイントです。
介護費用を抑えるために活用できる制度とサービス
介護費用はさまざまな制度やサービスを活用することで、負担を軽減できます。知っておくと役立つ支援策を紹介します。
介護保険の自己負担や上限額について
介護保険を使うと、サービス利用料の自己負担は原則1割（一定所得以上は2～3割）となります。ただし、利用できるサービスには上限額（支給限度基準額）が定められています。
たとえば、要介護1の場合の月額上限は約166,920円です。この範囲内であれば自己負担は1～3割で済みますが、超えた分は全額自己負担になります。
支給限度額や自己負担割合は、介護度や所得により異なりますので、事前に確認して無理のない利用計画を立てることが大切です。
高額介護サービス費制度の利用方法
介護サービス利用料が高額になった場合、「高額介護サービス費」制度を利用できます。これは、自己負担額が月ごとの限度額を超えた場合、その超過分が後で払い戻される制度です。
限度額は所得や世帯の状況によって異なりますが、たとえば一般的な所得の場合は月額44,400円が目安です。
手続きには市区町村への申請が必要となるため、介護サービスを多く利用している場合は忘れずに申請するようにしましょう。
福祉用具や住宅改修に使える助成制度
福祉用具の購入や住宅の手すり設置、段差解消などの改修費用は、介護保険から一部助成を受けることができます。福祉用具購入は年間10万円まで、住宅改修は原則20万円までが上限となっています（いずれも自己負担1～3割）。
実際に助成を受けるには、事前申請や工事前の写真提出などが必要です。
細かい手続きがあるため、ケアマネジャーや専門業者と相談しながら進めるとスムーズです。
介護費用を軽減するための自治体支援策
各自治体では、独自の介護費用軽減策を設けていることがあります。たとえば、紙オムツの給付や介護用品の支給、家事援助サービスの助成などです。
また、住民税非課税世帯向けの特別な減免措置や、医療費との合算で支援が受けられる場合もあります。
住んでいる地域の窓口や役所のホームページで情報収集することで、活用できる支援策を見つけやすくなります。
在宅介護と施設介護の選択基準とそれぞれの特徴
介護の形は家族の状況や本人の希望によって大きく変わります。ここでは選択のポイントや特徴を整理していきましょう。
本人の希望と家族の負担のバランスを考える
在宅介護は住み慣れた自宅での生活を続けられるメリットがありますが、その分家族の協力や負担も大きくなります。本人が自宅で過ごしたいと希望していても、介護する家族が仕事や自分の健康を保てるかどうかも重要なポイントです。
家族会議を開く、ケアマネジャーと相談するなどして、本人の気持ちと家族の負担のバランスを見つけましょう。
無理をし続けると共倒れになることもあるため、サービスの利用や一時的なショートステイを活用するのも選択肢の一つです。
施設介護の種類と費用の違い
施設介護には特別養護老人ホーム（特養）、有料老人ホーム、グループホームなど複数の種類があります。それぞれ利用条件やサービス内容、費用が異なります。
| 施設の種類 | 月額費用目安 | 特徴 |
| ——————– | —————- | —————- |
| 特別養護老人ホーム | 8～15万円 | 公的施設、所得に応じた費用 |
| 有料老人ホーム | 15～30万円 | 民間施設、サービス充実 |
| グループホーム | 10～20万円 | 認知症対応、小規模 |
入居時にまとまった資金が必要な場合もあるため、事前に情報を集めておきましょう。
在宅介護のメリットデメリットを整理
在宅介護の主なメリットは、住み慣れた環境で家族と一緒に過ごせる安心感です。自由な時間が多く、本人の生活リズムを維持しやすいのも特徴です。
一方で、家族の介護負担や、住まいのバリアフリー化など準備が必要です。介護者の体調や生活に無理が生じると、長期的には続けにくくなることもあります。
介護のプロに相談しながら、定期的に負担の状況を見直すことが大切です。
介護サービスの組み合わせで最適な形を探す
在宅介護でも、訪問介護やデイサービス、ショートステイなど複数のサービスを組み合わせることで、家族の負担を軽減しながら最適なケアが可能です。
たとえば、週に数日だけ通所サービスを利用し、その他は訪問介護でサポートしてもらう、必要に応じてショートステイを利用するなど、柔軟な対応ができます。
ライフスタイルや本人・家族の状況に合わせて、サービスを上手に活用しましょう。
介護費用の捻出方法と将来に備えるための工夫
在宅介護の費用をどのように準備し、将来に備えるかは重要なテーマです。具体的な方法や工夫をご紹介します。
年金や貯金を活用した費用管理のコツ
多くの方が介護費用を年金やこれまでの貯金でまかなっています。日々の支出を記録し、月単位で予算を立てることが大切です。
また、急な出費に備えて、毎月一定額を介護・医療費用として積立てておくと安心です。
定期的に家計ノートや家計アプリで支出を見直すことで、無理のない介護生活を続けやすくなります。
マイホーム借り上げ制度やリバースモーゲージの活用例
持ち家がある場合、マイホーム借り上げ制度やリバースモーゲージ（自宅を担保に資金を借りる仕組み）を利用して介護費用を捻出することも可能です。
これらの制度は、老後の住まいを確保しつつ資金を得る方法ですが、利用条件やリスクもあるため、事前に専門家に相談しましょう。
自宅を活用した資金調達は、将来の選択肢として知っておくと役立ちます。
適切なケアプラン作成で無駄な出費を防ぐ
ケアマネジャーと一緒にケアプランを立てることで、利用するサービスの内容や頻度を最適化でき、無駄な出費を防げます。
必要なサービスに絞って利用することで、家計への負担を抑えることが可能です。
また、定期的にケアプランを見直し、状況の変化に合わせて柔軟に対応することが大切です。
専門家や相談窓口を利用して安心感を得る
介護に関する悩みや費用の心配は、一人で抱えずに地域包括支援センターや社会福祉協議会などの相談窓口を活用しましょう。
制度やサービスの最新情報を得られたり、助成金や減免制度について具体的なアドバイスを受けられます。
分からないことがある場合は、早めに専門家に相談することで、安心して介護生活を送ることができます。
まとめ：在宅介護の費用と制度を知って賢く備える方法
在宅介護にはさまざまな費用がかかりますが、介護保険や助成制度を上手に活用すれば、負担を軽減しやすくなります。必要な費用の種類や平均的な相場、費用の準備方法を知っておくことで、安心して老後の生活設計ができるでしょう。
わからないこと、不安なことは専門家や相談窓口に助けを求めながら、無理なく自分や家族に合った介護の形を見つけていくことが大切です。
制度やサービスを味方につけて、賢く備えることで、より安心できる老後の暮らしを目指せます。
