高齢のご家族をデイサービスに預ける際、日々の様子や体調、変化をしっかり把握したいという思いを抱く方は多いものです。一方で、施設での様子が分からず不安を感じたり、どのように情報共有を行えばよいか迷われることもあるでしょう。
そこで大切なのが「デイサービス連絡帳」の活用です。連絡帳を上手に使えば、ご家族・施設・利用者本人が安心して過ごすための大きな支えとなります。ここでは、連絡帳の基本から書き方・最新事情まで、分かりやすくご紹介します。
デイサービス連絡帳の基本と役割を知ろう

デイサービス連絡帳は、ご家族と施設の間で利用者の様子を共有するための大切なツールです。その基本や役割を正しく理解し、より良い介護やコミュニケーションにつなげましょう。
デイサービス連絡帳とは何か
デイサービス連絡帳とは、利用者の一日の様子や体調、施設での活動を記録し、ご家族・施設職員間で情報をやり取りするノートや用紙のことです。主な内容として、食事、入浴、排泄などの日常生活動作から、レクリエーションやイベントへの参加状況、その日の体調や気になる点まで幅広く記載されます。
この連絡帳は、紙のノート形式だけでなく、最近ではデジタル化が進み、専用アプリやウェブでやり取りするケースも増えています。目的は「ご家族が自宅でのケアに役立てる」「施設側がご家族からの要望や懸念を把握する」など、双方の安心や信頼、利用者の安全を守ることにあります。
家族との情報共有における役割
デイサービス連絡帳は、ご家族が普段知ることのできない施設での様子を詳しく伝える橋渡し役です。具体的には、次のような役割があります。
- 日々の体調や行動の変化を、家族が把握できる
- 家族からの要望や相談を施設側が受け取りやすい
- 短期間の変化だけでなく、長期間の記録によって経過観察ができる
たとえば「今日は食事をよく食べた」「レクリエーションに笑顔で参加した」など、細やかな報告があることで、ご家族の安心感につながります。また、家族の声を職員に伝えることで、より本人に合ったケアへと反映しやすくなります。
職員間やケアマネージャーとの連携
連絡帳は職員同士の情報共有にも役立っています。交代勤務のスタッフが一目で利用者の当日の様子や注意点を把握できるため、ケアの質の維持やミス防止に役立っています。
また、ケアマネージャー(介護サービス計画の担当者)も連絡帳の記録を確認することで、計画の見直しやご家族へのアドバイスに活用します。例えば、「最近入浴を拒否することが増えた」「排泄の頻度が変わった」などの記載があれば、支援方法の検討材料にもなります。
連絡帳が利用者にもたらすメリット
連絡帳はご家族・職員だけでなく、利用者本人にも多くのメリットがあります。まず、ご家族とのつながりを感じられること。「今日の様子を家族が知ってくれる」という安心感や、家族からのコメントに励まされる方もいます。
また、日々の記録をもとに体調や生活の変化を早期に発見しやすくなるため、健康管理や安全面でもプラスとなります。さらに、連絡帳があることで職員が利用者一人ひとりの個性や好みに気づきやすく、より細やかな対応へとつながります。
デイサービス連絡帳に書くべき内容とポイント

デイサービス連絡帳に記入する内容は多岐にわたりますが、ポイントを押さえることで、より伝わりやすい記録ができます。この章では、具体的な書き方や工夫について解説します。
季節の挨拶や書き出しの工夫
連絡帳の書き出しには、短い季節の挨拶や心配りの言葉を添えると、温かみが伝わります。例えば「春らしい陽気が続いていますね」「今日は寒さが厳しい一日でした」など、季節感のある一言を加えるだけでも印象が良くなります。
また、「いつもお世話になっております」「本日もありがとうございました」など、感謝やねぎらいの言葉を入れることで、より良いコミュニケーションとなります。忙しい中でも、さりげない気配りを忘れずに記入しましょう。
入浴や食事など日常生活の様子
日常生活に関する記録は、ご家族が自宅での介護に生かせる大切な情報です。入浴に関しては、「今日は気持ちよく入浴されました」「足湯のみ希望されました」など、具体的な様子を簡潔にまとめます。
食事については、摂取量や食欲、好みの変化を記載しましょう。例えば、「昼食は完食されましたが、夕食は半分ほどでした」「食事の際にむせる様子はありませんでした」など、観察結果を具体的に書くことがポイントです。
表形式でまとめると見やすくなります。例:
項目 | 状況・内容 | 特記事項 |
---|---|---|
入浴 | 全身浴・足浴 | 体調良好 |
食事 | 昼食完食 | むせなし |
服薬 | 自力で内服 | 問題なし |
排泄や体調の変化の記録方法
排泄状況や体調の変化は、健康管理の重要なポイントです。排泄については、「午前に1回、尿失禁あり」「午後はトイレ誘導で排泄できました」など、回数や方法、変化があれば簡潔に記録します。
体調の変化も見逃さず、「朝から少し咳が出ていました」「歩行時にふらつきがありました」など、気付いた点を具体的に記載しましょう。体調不良時や急な異変があれば、できるだけ詳しく、必要に応じて職員間で共有し、ご家族にも早めに伝えることが大切です。
また、普段と違う様子が見られた場合には、次のような箇条書きを活用しましょう。
- 午前:食事後に軽い咳あり
- 午後:昼寝後に元気な表情
- 排泄:1日4回、特に問題なし
機能訓練やレクリエーションの報告
デイサービスでは、機能訓練やレクリエーション活動が日常的に行われています。これらの活動内容やご本人の参加状況、様子は、ご家族にとっても関心の高い情報です。
たとえば、「体操に積極的に参加されました」「塗り絵を楽しんでいました」など、活動名と簡単な感想や表情を伝えると良いでしょう。本人のやる気や反応、職員や他の利用者との交流も合わせて記載することで、ご家族が安心しやすくなります。
活動のバリエーションや参加の頻度なども、時には一覧表にすると分かりやすくなります。
日付 | 活動内容 | 参加状況 |
---|---|---|
4月1日 | 体操 | 積極的 |
4月1日 | 塗り絵 | 楽しまれた |
デイサービス連絡帳の書き方と注意点

連絡帳は、伝えたい内容が正確に相手へ伝わることが大切です。分かりやすい記載や言葉の選び方、個人情報への配慮など、注意点も押さえながら書くことを心がけましょう。
誰でも分かる言葉で伝えるコツ
連絡帳は、ご家族や職員などさまざまな方が目にします。難しい専門用語は避け、誰にでも分かりやすい表現を使うことが大切です。
例えば、「ADL」や「バイタル」など専門用語は、「日常生活の動き」「体温や血圧」など、具体的な日本語に置き換えましょう。また、長文になりすぎないように、1文1内容を意識して簡潔に記載すると読みやすくなります。
箇条書きや表を取り入れて、情報を整理して伝えるのも有効です。
ネガティブ表現を避ける理由
連絡帳では、利用者やご家族が目にして気持ちが沈むような表現は避けましょう。たとえば、「全く動かない」「全然笑わない」などの言い方よりも、「今日は少し疲れた様子でした」「静かに過ごされていました」と表現を工夫します。
否定的な表現ではなく、できるだけ事実に基づいた穏やかな言葉選びを心がけることで、ご家族も安心しやすくなります。特に、状態が良くないときほど、工夫した伝え方が大切です。
個人情報やプライバシーへの配慮
連絡帳には多くの個人情報が含まれます。取り扱いには十分注意し、他の利用者名や不要な私的情報を書かないようにしましょう。また、第三者に見られないように管理することも大切です。
ご家族やご本人が望まない情報は記載しない、必要最小限の情報にとどめるなど、プライバシーへの配慮を忘れずに記入しましょう。
家族からの返事やコメントへの対応
ご家族から連絡帳にコメントや質問が記載されることがあります。その際は、できるだけ早く、丁寧に返信することが信頼関係を築くうえで重要です。
たとえば、「昨日の転倒について詳しく教えてください」といった質問には、経過や対策を具体的に記入しましょう。また、お礼や励ましの言葉には、感謝や今後の配慮について一言添えると良いでしょう。
デイサービス連絡帳の活用例と文例集

実際にどのように記載すると分かりやすいか、シーンごとの文例や記録の工夫を確認してみましょう。これらの例を参考にしながら、状況に合わせて活用してみてください。
認知症利用者の様子を伝える文例
認知症の方は日々の変化が大きい場合もあるため、家族への細やかな報告が大切です。文例をいくつかご紹介します。
- 「今日はご自分で上着を着ることができました」
- 「午前中は落ち着いて過ごされ、午後は少し不安な様子が見られました」
- 「会話の中でご家族の名前を口にされる場面がありました」
否定的な表現を避けつつ、事実をやさしく伝える工夫を意識しましょう。
薬の内服や口腔ケアについての書き方
薬や口腔ケアは健康管理に欠かせません。以下のような記載がおすすめです。
- 「昼食後、薬を職員見守りのもと服用されました」
- 「歯磨きはご自身で行い、仕上げ磨きも受け入れてくださいました」
- 「服薬時にむせる様子はありませんでした」
薬の飲み忘れや拒否、口腔ケアの拒否などがあった場合も、穏やかな言い回しを心がけて記録します。
送迎時や他の利用者との交流の記録
送迎時や他の利用者との交流の様子も、ご家族にとっては気になるポイントです。記載例を挙げます。
- 「朝の送迎時、ご自身で靴を履くことができました」
- 「帰宅時は少し疲れた様子でしたが、笑顔でご挨拶されていました」
- 「レクリエーション中、他の利用者の方と一緒に歌を楽しまれていました」
交流の場面では、良い関わり方や表情についても伝えると安心につながります。
トラブルや体調不良時の伝え方
トラブルや体調不良があった場合は、ご家族に不安を与えないよう、事実と対応を簡潔にまとめましょう。
- 「本日午後、歩行時に軽く転倒されましたが、すぐに立ち上がられ、ケガはありませんでした」
- 「昼食後に少し熱が上がりましたが、安静にされ、経過観察を行いました」
問題点だけでなく、その後の対応や現在の状況も合わせて伝えることが大切です。
デイサービス連絡帳の最新事情と今後
近年はデジタル化や業務効率化の観点から、連絡帳にも新しい動きがみられます。現状と今後の展望について見てみましょう。
連絡帳のデジタル化が進む背景
人手不足や業務負担軽減を背景に、デイサービス連絡帳のデジタル化が進んでいます。紙のノートでは転記や管理が大変なため、スマートフォンやタブレットでやりとりできる仕組みの導入が増えています。
デジタル化によって、情報の見やすさや管理のしやすさが向上し、記録の紛失リスクも減少します。また、遠方に住むご家族とも簡単に情報共有できるのが大きな利点です。
アプリやソフトを活用するメリット
連絡帳アプリや専用ソフトを活用することで、次のようなメリットがあります。
- 入力や送信が簡単で、すぐに情報が共有できる
- 写真や動画も記録・送付でき、より具体的な様子を伝えられる
- データとして蓄積され、過去の記録の検索や分析がしやすい
さらに、ご家族・職員双方がスマートフォンで手軽に確認できるため、リアルタイムな連絡や相談が可能になります。
連絡帳廃止を検討するデイサービスの動き
一部のデイサービスでは、連絡帳の廃止を検討する動きも出てきています。背景には情報管理の難しさや、他の方法で十分に情報共有できる体制が整ってきたことなどがあります。
たとえば、毎日の連絡帳に代わり、電話やメール、定期的な面談でのコミュニケーションに切り替えるケースもあります。ただし、ご家族のニーズや利用者の状況に合わせた柔軟な対応が求められます。
今後の連絡帳の在り方と選び方
今後は、紙とデジタル両方の良い点を活かしながら、それぞれのご家庭や施設の事情にあった方法を選ぶことが大切です。たとえば、ITが苦手なご家族には従来のノート、遠方の方にはアプリを勧めるなど、選択肢を増やすことが望まれます。
また、書き方や記録内容の質も引き続き重視し、伝わりやすい・続けやすい連絡帳の在り方が求められるでしょう。
まとめ:デイサービス連絡帳で信頼と安心をつなぐ
デイサービス連絡帳は、ご家族・職員・利用者の三者をつなぎ、信頼と安心を育む大切な役割を担っています。日々の様子や変化を丁寧に記録・共有することで、より良いケアや家族の安心感につながります。
今後も、時代に合わせた方法を柔軟に取り入れながら、コミュニケーションの質を高めていくことが、安心して老後を暮らすための大きな支えとなるでしょう。