老後の暮らしや介護には、家計や税金についての不安もつきものです。特にデイサービスの費用がかさむと、「少しでも負担を軽くできないか」と悩む方も多いのではないでしょうか。
そんなとき、医療費控除を上手に活用できれば大きな助けになります。しかし、デイサービス費用がどこまで医療費控除の対象なのか、手続きや条件がわかりづらいことも。この記事では、知っておきたい仕組みや具体的なポイント、便利な活用法について、わかりやすくご案内します。
デイサービスは医療費控除の対象になるのか知っておきたいポイント

介護や老後の暮らしで必要となるデイサービスですが、その費用が医療費控除の対象になるかは気になるところです。ここではまず、基本的な仕組みや確認すべきポイントについて解説します。
医療費控除の基本的な仕組みと対象範囲
医療費控除とは、1年間に支払った医療費が一定額を超えた場合に、所得税や住民税の一部が戻ってくる制度です。原則として、自己負担分の医療費が年間10万円、もしくは所得の5%を超えた分が控除の対象となります。
この控除の対象となるのは、医師による診療や治療、薬代、入院費用など直接的な医療行為にかかった費用です。家族の分も含めて申請でき、家計全体の負担軽減につながります。ただし、美容目的の治療や健康診断、予防接種などは控除対象外です。制度の概要を理解し、自分の支出が該当するかを確認することが大切です。
デイサービス費用が医療費控除の対象となる条件
デイサービスの費用が医療費控除に該当するかどうかは、サービスの内容によって異なります。一般的な「介護や見守り」だけではなく、医師や看護師による医療的なケアが含まれていることがポイントです。
たとえば、医療的な管理やリハビリテーションなど「医療系サービス」が提供されている場合、その部分の費用が控除の対象となります。逆に、食事や入浴、レクリエーションのみであれば、控除の対象外となることがほとんどです。具体的なサービス内容や領収書の記載をしっかり確認しましょう。
医療系サービスと福祉系サービスの違い
デイサービスには「医療系」と「福祉系」の2種類のサービスが含まれています。医療系サービスは、リハビリや看護師による健康管理、病状の観察などが該当します。
一方、福祉系サービスは、食事や入浴の介助、日常生活のサポート、レクリエーションなどが中心です。医療費控除の対象になるのは、前者の医療系サービスに限られるため、領収書や利用明細でどの部分が該当しているかを確認することが大切です。
下記は、両サービスの主な違いをまとめた表です。
サービスの種類 | 主な内容 | 控除対象か |
---|---|---|
医療系 | リハビリ、看護師ケア | 対象 |
福祉系 | 食事、入浴、レク | 対象外 |
医療費控除の対象かどうかを確認する方法
デイサービスの費用が医療費控除に該当するかを確認するには、まずサービス内容をしっかり把握することが重要です。利用している施設や事業所から発行される「領収書」や「サービス明細書」に、どのサービスがどのくらいの費用で提供されているかが記載されています。
また、「医療系サービス」として計上されている項目を確認し、金額を合計しましょう。不明点がある場合は、事業所に問い合わせてみることもおすすめです。領収書の記載内容がわかりにくい場合は、税務署や市区町村の窓口で相談すると安心です。
デイサービス費用で医療費控除を受けるための具体的な条件

デイサービスの費用で医療費控除を受けるには、単に利用しているだけではなく、いくつかの具体的な条件を満たす必要があります。ここではその条件や注意点について詳しくご紹介します。
介護保険で認められる医療系サービスとは
介護保険を利用したデイサービスの中には、医療系サービスが組み込まれていることがあります。これらは、医師の指示によるリハビリや看護師による体調管理、褥瘡(床ずれ)予防のケアなどが該当します。
このような医療的なケアは、介護保険の「医療系サービス」として明確に区分されており、領収書にも記載されることが多いです。医療費控除を受ける際は、この部分だけが対象になるため、サービス利用明細書でどのサービスが「医療系」として提供されているかを必ず確認しましょう。
医療系サービスと併用する場合の注意点
デイサービスを利用している中で、医療系と福祉系サービスを同時に受けている場合には、費用の区分に注意が必要です。医療費控除に申請できるのは医療系サービス分のみで、食事や送迎、入浴などの福祉系サービス分は対象になりません。
たとえば、1日の利用料が5,000円で「医療系サービス」が1,500円、「福祉系サービス」が3,500円の場合、控除対象は1,500円のみです。領収書や明細書で金額ごとに区分されているか、自分で計算しやすいように整理しておきましょう。
領収書や明細書に記載される控除対象費用の見方
医療費控除の申告には、領収書や明細書の適切な保管と確認が欠かせません。領収書には、利用したサービス内容ごとに金額が分かれて記載されていることが多いです。
確認する際は、次のような点に注目してください。
- 「医療系サービス」「リハビリ」「看護」などの記載があるか
- 控除対象となる金額が明記されているか
- 領収書の日付や宛名が正しいか
分かりづらい場合は、事業者に「医療費控除用の明細書をお願いしたい」と相談すると、対応してもらえるケースもあります。トラブルを避けるためにも、領収書は必ず受け取り、内容を確認してから保管しましょう。
医療費控除の申請に必要な書類と準備手順
医療費控除を受けるためには、次のような書類が必要です。
- デイサービスの領収書または利用明細書
- 医療費控除の明細書(確定申告書に添付)
- 本人確認書類(マイナンバーカードなど)
- 確定申告書
準備の流れは以下の通りです。
- 1年間の領収書や明細書を整理
- 控除対象となる費用を集計
- 医療費控除の明細書を作成
- 確定申告書に必要事項を記入
- 税務署またはe-Taxで申告
不明点がある場合は、税務署や市区町村の窓口で相談することも検討しましょう。
医療費控除の申請手続きとよくある疑問

医療費控除の申請にはさまざまな手続きと疑問がつきものです。ここでは、申請の流れや家族に関するよくある質問について解説します。
確定申告で医療費控除を申請する流れ
医療費控除を申請するためには、原則として確定申告が必要です。申告の基本的な流れは以下の通りです。
- 1年間に支払った医療費の領収書を整理
- 控除対象となる金額を計算
- 医療費控除の明細書を記入
- 確定申告書に反映させ、必要書類をそろえる
- 税務署に提出、またはe-Taxで電子申請
最近では、スマートフォンからもe-Taxを使った申告が可能になっています。申請の際は、必要書類をもれなくそろえることが大切です。
年金収入のみの人でも医療費控除を利用できるのか
年金が主な収入源である高齢者でも、医療費控除は利用できます。所得税や住民税の納税義務がある場合、控除によって税金が少なくなったり、納めすぎた税金が還付されたりします。
ただし、課税対象となる年金額や医療費の合計金額によって、控除の効果が変わります。年金収入だけでも条件を満たせば申請できるため、医療費が高額になった年はぜひ確定申告を検討しましょう。
離れて暮らす家族の介護費用は医療費控除の対象になるか
離れて暮らしている家族の介護費用についても、一定の条件を満たせば医療費控除の対象となります。申告者本人と生計が同じ(例えば仕送りをしている場合など)の家族であれば、遠方に住んでいても申請可能です。
ただし、親族でも生計が別の場合は対象外となるので注意が必要です。家族の実情に合わせて、控除の対象かどうかを確認しておきましょう。
代理申請や家族の分もまとめて申請できるか
家族の医療費をまとめて申請できるのは、申告者本人と生計を一にしている場合です。たとえば、夫が妻や子どもの医療費をまとめて申告することが可能です。
また、高齢の親に代わって子どもが代理で申告することもできます。この場合は、委任状や本人確認書類が必要になることがありますので、事前に税務署などで必要書類を確認しておくと安心です。
デイサービス費用の医療費控除を活用するメリットと注意点

デイサービス費用を医療費控除に活用できれば家計の負担を軽減できますが、メリットだけでなく注意すべき点もあります。この章では、還付額や税金への影響、注意点を整理します。
医療費控除でどれくらい税金が戻るのか
医療費控除による税金の還付額は、支払った医療費の合計や所得額によって変わります。控除額は「支払った医療費の合計-保険金等で補填された額-10万円(または所得の5%)」で計算します。
実際に戻ってくる税金は、その人の所得税率によって決まります。たとえば、所得税率が10%の場合、控除額が20万円であれば2万円が還付される計算です。所得税だけでなく、住民税にも影響がある場合があります。
所得税や住民税への影響
医療費控除を申請すると、所得税だけでなく翌年の住民税にも影響します。所得税は確定申告後に還付や納付が発生し、住民税は自治体からの通知で減額が反映されます。
還付や減額の効果は、所得や他の控除との兼ね合いによります。控除の申請が遅れると、住民税の減額が翌年度に持ち越されることもあるため、タイミングにも注意しましょう。
医療費控除のデメリットや申請時の注意点
医療費控除を申請する場合、いくつかの注意点もあります。まず、控除の対象となる金額が限定されているため、想定より還付額が少ない場合があります。
また、領収書や明細書の保管、申請書類の作成など手間がかかることもデメリットです。控除対象外の費用を含めて申請してしまうと、後で修正や確認を求められる場合があるため、申請内容の確認は丁寧に行いましょう。
控除対象外となる費用やケース
デイサービス利用時のすべての費用が医療費控除に含まれるわけではありません。具体的には、次のような費用は対象外となります。
- 食事代(治療に直接関係しない場合)
- 入浴や送迎のみのサービス
- レクリエーションや趣味活動費
これらは福祉的なサービス扱いとなるため、控除の対象にはなりません。サービス内容ごとに費用が分かれている場合は、控除対象部分だけを計算しましょう。
医療費控除の対象になるその他の介護サービスとおすすめ活用法
デイサービス以外にも、医療費控除の対象となる介護サービスがあります。上手に活用することで、より大きな負担軽減につなげられます。
訪問看護や訪問リハビリテーションの費用
在宅介護の場面では、訪問看護や訪問リハビリテーションを利用している方も多いです。これらは、医師の指示に基づいて行われる医療行為として、医療費控除の対象となります。
訪問看護では、看護師による投薬管理や医療的ケアの記録がなされます。訪問リハビリテーションも、理学療法士や作業療法士による専門的なリハビリが該当します。利用した場合は、領収書に「訪問看護」「訪問リハビリ」などの記載があるか確認し、医療費控除の申請に活用しましょう。
介護ベッドや福祉用具のレンタル費用は対象か
介護ベッドや車いすなどの福祉用具をレンタルした費用も、医師の診断書があれば医療費控除の対象になる場合があります。ただし、単なる生活の便利さを目的としたレンタルは対象外です。
対象となるケースは、医療的な必要性が認められた場合に限られますので、医師の診断書や証明書をあわせて保管しておきましょう。購入ではなくレンタルの場合のみが原則対象となる点にも注意が必要です。
介護用おむつ代や食費などの取り扱い
介護が必要な方のおむつ代についても、一定の条件を満たせば医療費控除に含めることができます。たとえば、医師による「おむつ使用証明書」がある場合や、要介護度の認定を受けている場合です。
一方、デイサービス内での食費については、治療に直接関係しない限り控除対象外です。おむつ代や食費は、証明書の有無や利用目的によって取り扱いが異なるため、領収書だけでなく関係書類もそろえておきましょう。
医療費控除を上手に活用するためのポイント
医療費控除を賢く使うためには、年間を通じての費用管理と、必要書類の整理が欠かせません。次のようなポイントを押さえておきましょう。
- 利用したサービス内容ごとに領収書や明細書を保管
- 医療系サービスかどうかを明細で確認
- 医師の証明が必要な場合は忘れず入手
- 年度末にまとめて整理し、早めに申告準備
計画的に準備を進めることで、スムーズに申請ができ、結果として家計の負担も軽くなります。
まとめ:デイサービス費用の医療費控除は条件と手続きを正しく理解して賢く活用しよう
デイサービスや介護にかかる費用は、決して少なくありません。医療費控除を活用すれば、一定の条件のもとで税金の負担を軽くすることができます。
控除を受けるためには、「医療系サービス」に該当するかどうか、領収書の内容、必要な書類の準備などが大切です。家族やご自身の状況に合わせて、制度を正しく理解し、手続きを進めていきましょう。
不明点があれば、専門の窓口や税務署に相談しながら、無理のない範囲で医療費控除を賢く活用してみてください。