デイサービスのサービス提供体制強化加算をわかりやすく解説｜2024年度の改定や申請方法も紹介

2025年8月11日

介護や老後の暮らしを考えるとき、「サービスの質の向上」や「安心できる生活環境の確保」は多くの方にとって大切なテーマです。特に、デイサービスをはじめとする介護サービスを利用するご家族では、どのような体制でサービスが提供されているのか、加算制度などの仕組みがどのように運営や利用者に影響するのか、気になる方も少なくありません。

今回は、「サービス提供体制強化加算」というデイサービス運営に関わる制度を中心に、最新の改定ポイントや取得方法、活用事例まで分かりやすく解説します。ご自身やご家族の介護を考える際の参考になれば幸いです。

デイサービスのサービス提供体制強化加算とは

デイサービスのサービス提供体制強化加算は、介護サービスの質を高めるために導入された加算制度です。この制度は、より良い介護環境を目指した現場の取り組みを支援する仕組みとして注目されています。

サービス提供体制強化加算の基本的な仕組み

サービス提供体制強化加算とは、デイサービスなどの介護事業所が一定の基準を満たすことで受け取ることができる加算です。この加算は、より質の高い職員構成や、介護福祉士の割合が多い体制を整えているサービス事業所を評価し、追加で報酬を支給するものです。

たとえば、介護福祉士資格を持つ職員の割合が一定以上である場合や、勤続年数の長い職員が多い場合に加算が認められます。これにより、事業所はより安定した人材確保や職員の定着を目指す環境整備が促進されます。また、加算の段階も複数あり、施設の体制や人員配置に応じて細かく設定されています。

こうした取り組みは、利用者が安心してサービスを受けられる基盤づくりにもつながります。サービス提供体制強化加算は、単なる事業所の収入増加を目的としたものではなく、現場で働くスタッフへの評価や、サービス品質の向上にも大きく貢献しています。

2024年度の主な改定ポイントと背景

2024年度の介護報酬改定では、サービス提供体制強化加算においていくつかの見直しが行われました。主なポイントは、より実効性のある人材配置や介護福祉士の役割強化を反映させるための基準変更です。

たとえば、加算を取得するために必要な介護福祉士の割合が従来より引き上げられたほか、勤続年数の基準もより明確になりました。これにより、安定した職員配置や、専門性の高い人材の確保がさらに重要視されています。また、今回の改定では、非正規雇用や非常勤職員の扱いについても、新たな指針が設けられています。

これらの見直しは、介護人材の定着を促し、利用者に対するサービスの質の向上を図ることが狙いです。今後、加算を目指す事業所は、これらの新基準に沿った運営が求められるようになるため、定期的な情報収集や体制の見直しが大切です。

加算を取得するメリットと施設運営への影響

サービス提供体制強化加算を取得することは、事業所にとってさまざまなメリットがあります。最も大きいのは、加算分として追加の報酬が得られることで、安定した経営基盤を築きやすくなる点です。

この加算によって得た収益は、職員の処遇改善や研修、さらなる施設環境の整備に活用できます。たとえば、職員の給与や福利厚生の向上に使うことで、スタッフのモチベーションや定着率アップにつながります。また、利用者にとっても、経験豊富な職員から安定したサービスを受けられるという安心感が生まれます。

しかし、加算の取得には一定の基準を満たす必要があり、基準をクリアするためには計画的な人材配置や、継続した職場改善が求められます。加算取得は単なる収入増ではなく、施設全体の質向上と直結している点を理解しておくことが大切です。

よくある誤解と正しい理解のポイント

サービス提供体制強化加算に関しては、利用者や事業所スタッフの間でさまざまな誤解もあります。たとえば、「加算を取れば誰でもすぐに収入が増える」「非常勤職員は対象外」などの誤解が挙げられます。

実際には、加算取得には細かな要件が設定されており、職員の資格や勤続年数、勤務形態ごとに条件が異なります。非常勤職員も一定の条件を満たせば加算にカウントされますし、要件を満たしていない場合は加算が認められません。

また、加算を取得しても、それが即時に利用者負担増につながるわけではない点や、事業所ごとに加算の額や適用の可否が異なることも理解が必要です。制度の正しい理解は、運営側だけでなく利用者側にも役立つ知識となります。

サービス提供体制強化加算の算定要件と対象サービス

サービス提供体制強化加算を取得するためには、一定の要件を満たしたうえで、対象サービスに該当していることが必要です。この章では、加算の具体的な算定要件や対象となるサービスについて整理します。

算定要件の詳細と最新基準

2024年度の改定により、算定要件はより明確かつ厳格になりました。主な基準は、介護福祉士資格を持つ職員の割合や、勤続年数の長い職員がどの程度在籍しているかです。

具体的には、常勤換算での職員数における介護福祉士の割合が一定以上（たとえば、全体の60%以上など）必要です。また、勤続年数5年以上の職員が全体の何割を占めているかも重要なポイントとなります。

こうした基準は、事業所が計画的に人員配置や育成を進めているかどうかが問われます。基準を満たすためには、職員の採用や育成、定着支援など、日ごろからの取り組みが不可欠です。

デイサービス以外の対象となるサービス種別

サービス提供体制強化加算は、デイサービスだけでなく、複数の介護サービス種別で認められています。以下の表は、代表的な対象サービスをまとめたものです。

サービス種別	加算対象	主な特徴
デイサービス	対象	日帰り介護
訪問介護	対象外	自宅訪問型
ショートステイ	対象	短期入所サービス

たとえば、ショートステイ（短期入所生活介護）では加算取得が可能です。一方、訪問介護など自宅を訪問して行うサービスは対象外となる点に注意が必要です。事業所の運営形態によって対象となる加算制度も異なるため、事前に確認しておくと安心です。

介護福祉士や勤続年数の割合要件

加算取得における大きなポイントは、介護福祉士や勤続年数の割合です。一定の割合以上の介護福祉士が在籍していること、また長く勤務している職員が多いことが求められます。

具体的な例としては、

全体の職員数のうち介護福祉士が60％以上
勤続年数5年以上の職員が40％以上

といった要件が設定されています。実際の割合計算には、非常勤や短時間勤務の職員も「常勤換算」という方法で計算されるため、正確な把握が必要です。

人材確保が難しい地域や、職員の入れ替わりが多い施設では、これらの割合要件を満たすことが課題となりやすいです。職員の意欲向上や定着のための職場環境整備も重要です。

注意すべき休業期間や非常勤職員の取り扱い

算定にあたっては、職員の休業期間や非常勤職員の扱いについても注意が必要です。たとえば、産休や育児休業中の職員は、一定期間までは職員数にカウントできますが、長期にわたる場合は除外されることがあります。

また、非常勤職員の計算は、働いている時間数に応じて「常勤換算」という方法で行われます。これにより、週20時間勤務の職員は0.5人分とみなされるなど、正確な換算が求められます。

勤務状況や休業の取り扱いを誤ると、加算の要件を満たしていないと判断される可能性があるため、日々の勤務管理や記録の徹底が不可欠です。特に休業者やシフト制の多い施設では、定期的な見直しをおすすめします。

単位数と加算の計算方法

サービス提供体制強化加算を取得する際には、単位数や計算方法の理解が欠かせません。この章では、サービスごとの単位数や職員数の計算、収益への影響について整理します。

サービス種別ごとの加算単位数一覧

サービス提供体制強化加算は、サービスの種類や体制区分によって加算単位数が異なります。主な区分ごとに、下記のような単位設定となっています。

区分	1回あたりの加算単位数	適用例
区分Ⅰ	18単位	基本基準を満たす場合
区分Ⅱ	12単位	一部基準を満たす場合
区分Ⅲ	6単位	最低基準を満たす場合

たとえば、区分Ⅰの基準を満たす場合は利用者1人あたり18単位の加算となります。区分ごとに必要な条件や加算額が異なるため、事業所の体制に合わせて選択と調整が必要です。

介護職員数や勤続年数の計算方法

加算取得には、介護職員の数や勤続年数の計算が重要です。計算は「常勤換算方法」で行い、非常勤職員も勤務時間を換算して計上します。

計算の基本的な考え方は以下の通りです。

常勤職員：1人＝1.0
非常勤職員：週の労働時間 ÷ 常勤の所定労働時間

たとえば、常勤が週40時間、非常勤が週20時間なら0.5人とカウントします。また、勤続年数は在籍期間で判断し、休業期間も要件に応じて扱いが異なります。

こうした計算は、月単位・年度単位で行い、必要書類とともに管理しておくことが大切です。職員数の変動や新規採用があった場合は、すぐに計算し直すことをおすすめします。

算定対象期間とその考え方

加算の算定対象期間は、原則として毎月1日から末日までの1か月間です。ただし、新たに加算を取得した場合や人員配置に変動があった場合は、該当月から算定がスタートします。

また、年度途中で基準が変わった場合は、変更があった日から基準適用されます。月ごとの算定結果は、翌月や翌々月の請求に反映されることが一般的です。

算定期間中は、基準を満たしているかどうかを都度確認し、必要に応じて人員配置や勤務状況を調整することも求められます。年度末や人事異動期は特に注意が必要です。

実際の加算収益と経営への影響

サービス提供体制強化加算を取得することで、施設の収益は大きく変わることがあります。たとえば、1日20名が利用するデイサービスで、区分Ⅰの加算（18単位）を取得した場合、1日あたり360単位の追加収入となります。

この収益は、職員の処遇改善や施設の設備投資、研修費用などに活用できます。経営的な観点では、加算取得による安定収入が職員採用やサービスの質向上につながりやすく、長期的な運営戦略を立てやすくなります。

ただし、加算取得にはコストや管理業務も増えるため、収支バランスや運営体制をしっかり見直すことが必要です。単なる収入増加だけでなく、職場全体のモチベーションや利用者満足度向上へつなげることが重要です。

届出や申請に必要な書類と手続き

サービス提供体制強化加算を取得するには、所定の書類を揃えて自治体などへ届出が必要です。申請手続きの流れや、よくあるトラブルについても確認しておきましょう。

必要となる書類の種類と作成ポイント

加算の申請には、職員配置表や資格証明書、勤続年数証明書など複数の書類が必要です。主な書類は以下の通りです。

職員の資格証明書の写し
勤続年数を証明する書類
職員配置一覧表
事業所の運営体制を示す説明書

書類作成時は、内容に誤りがないよう正確に記載し、必要な証明書類の添付忘れにも注意しましょう。また、自治体ごとに様式や必要書類が異なる場合があるため、事前に確認して準備することをおすすめします。

届出から加算取得までの具体的な流れ

申請の流れは、おおむね以下のようになります。

必要書類の準備・作成
管轄の自治体（市区町村または都道府県）へ提出
内容審査（追加資料の提出を求められることも）
加算認定の決定
認定後、次回の介護報酬請求から加算適用

自治体によっては、オンラインでの申請や事前相談が可能な場合もあります。審査期間は通常1～2か月程度かかることが多いため、余裕をもってスケジュールを立てることが大切です。

申請時に気をつけたい注意点

申請時には、以下のポイントに特に注意が必要です。

書類の記載ミスや記入漏れ
職員数や資格証明の不一致
勤続年数の計算方法の誤り
申請期限の遅れ

提出前には必ずダブルチェックし、可能であれば第三者による確認も行いましょう。また、基準や様式の変更があった場合は、最新情報を自治体の窓口や公式サイトで確認することをおすすめします。

よくある申請トラブルと解決策

よくあるトラブルとしては、書類不備や基準未達による申請却下、追加資料の再提出指示などが挙げられます。たとえば、資格証明書のコピーが不鮮明だったり、勤続年数の計算期間が誤っていると審査が通りません。

解決策としては、

書類作成時のマニュアル作成
定期的なスタッフ研修の実施
申請後の自治体との密な連絡

などが効果的です。また、トラブルが発生した場合は早めに担当窓口へ相談し、指示に従って迅速に対応することが重要です。

サービス提供体制強化加算の活用事例とよくあるQ&A

加算を活用するデイサービス現場では、具体的にどのような効果や課題が見られているのでしょうか。実例や現場の声、よくある質問とその解説、便利なツール情報も紹介します。

デイサービス現場での取得実例紹介

あるデイサービス事業所では、加算取得を目指して職員の資格取得支援や、勤続年数の長い職員の定着促進に力を入れました。その結果、加算取得後は追加収入を活用し、スタッフの処遇改善や研修費用を充実させることができました。

また、利用者からは「職員が安定していて安心できる」「サービスの質が高くなった」といった声が多く寄せられています。加算取得によって、経営面だけでなく現場の雰囲気や利用者満足度が向上したという報告も増えています。

加算取得後の運用と人材育成のポイント

加算取得後は、取得基準を継続して満たすことが求められます。そのため、職員の資格取得を引き続き支援したり、定着促進のための職場環境づくりを進めていくことが重要です。

たとえば、定期的な研修やキャリアアップ制度の導入、職員の意見を反映した業務改善などが有効です。また、加算で得た収入をどのように分配し、現場に還元するかも重要なポイントです。明確な方針を立てることで、職員のモチベーション向上につながります。

よくある質問と専門家による解説

サービス提供体制強化加算について、よく寄せられる質問とその回答をまとめました。

質問	回答
非常勤職員でも加算対象になりますか？	勤務時間に応じて対象です
加算取得後に基準を下回った場合は？	速やかに自治体へ報告が必要
利用者の自己負担額は増えますか？	原則として変わりません

こうした疑問は、自治体の窓口や専門家への相談で解消できます。制度の細かな点は、最新の情報を確認しながら対応することが大切です。

介護ソフトなど活用できるツール紹介

加算管理や書類作成には、介護業界向けの専用ソフトやシステムが役立ちます。主な機能や特徴を下記にまとめました。

ツール名	主な機能	特徴
介護記録ソフト	職員管理・加算計算	操作が簡単
勤怠管理システム	勤務実績集計	自動計算対応
書類作成支援ツール	届出書類の自動生成	ミス防止につながる