高齢化が進む中、家族の介護や老後の暮らしに対する不安や悩みを持つ方が増えています。自宅介護を選ぶ場合、どんな費用がかかるのか、またどのようなサポートや制度が利用できるのか、具体的に知っておくことは安心につながります。
費用の全体像や負担を軽くする方法、そして家族の暮らしを守るための情報を、分かりやすくまとめました。これからの暮らしを考える際の参考にしてください。
介護を自宅で行う場合にかかる費用の全体像を知ろう

自宅で介護を始める場合、どのような費用がどれくらい必要なのかを把握しておくことは大切です。介護保険の仕組みや自己負担の割合、費用の目安を知ることで、将来の備えや家計の計画が立てやすくなります。
介護保険が適用されるサービスと自己負担の割合
介護保険は、要支援や要介護と認定された方が利用できる公的な制度です。自宅での介護においては、訪問介護やデイサービス、福祉用具のレンタルなど、多様なサービスが利用できます。介護保険のサービスは、原則として費用の1割から3割が自己負担となります。負担割合は所得によって異なり、現役世代並みの収入がある方は3割、それ以外の方は1割または2割です。
たとえば、介護保険が適用されるサービスの一例と自己負担の目安は次の通りです。
サービス | 1回あたりの費用 | 自己負担(1割) |
---|---|---|
訪問介護(30分) | 約2,500円 | 約250円 |
デイサービス(1日) | 約7,000円 | 約700円 |
このように、介護保険を利用すれば比較的少ない自己負担で必要なサービスを受けられますが、サービスの種類や回数によって負担額は変わります。
要支援・要介護度別に異なる費用の目安
介護にかかる費用は、本人の状態や介護度によって変わります。要支援から要介護まで、認定区分が細かく分かれており、それぞれ利用できるサービスの上限金額も異なります。
たとえば、1カ月あたりの介護保険サービス利用限度額(2024年4月時点の一例)は次のようになります。
区分 | 利用限度額(月) | 自己負担(1割) |
---|---|---|
要支援1 | 約5万円 | 約5,000円 |
要支援2 | 約10万円 | 約10,000円 |
要介護1 | 約17万円 | 約17,000円 |
要介護5 | 約36万円 | 約36,000円 |
自己負担分は限度額に対して1割から3割です。介護度が高いほど利用できるサービスも増えますが、その分自己負担も増える傾向があります。また、介護保険の対象外となるサービスは全額自己負担となる点にも注意が必要です。
自宅介護と施設介護の費用を比較
自宅介護と施設介護では、かかる費用の内容や総額が大きく異なります。自宅介護は家族が支援する分、費用を抑えやすい一方、施設介護は手厚いサービスが受けられる分、費用が高くなりやすいです。
一般的な月額費用の比較例を表にまとめました。
介護の形態 | 月額費用の目安 | 主な費用内容 |
---|---|---|
自宅介護 | 1万〜10万円程度 | サービス利用料、生活費 |
施設介護 | 10万〜20万円以上 | 施設使用料、食費など |
自宅の場合は、サービスの使い方や家族の協力によって費用を調整できますが、施設の場合は一定の利用料がかかります。家計や介護の希望に合わせて選ぶことが大切です。
介護にかかる月額費用と一時的な初期費用
自宅介護では、毎月かかるランニングコストだけでなく、初期費用も考えておくことが大切です。月額費用には、介護サービスの自己負担分や日用品、食費、光熱費が含まれます。
初期費用としては、福祉用具の購入や住宅改修があげられます。たとえば、手すりの設置や浴室のバリアフリー化など、安全な生活環境を整えるための工事費用が必要になります。これらの一部については、介護保険から補助を受けられる場合がありますので、事前に確認しておくと安心です。
自宅介護で発生する具体的な費用項目

自宅で介護を行う際には、普段あまり意識しない細かな出費も積み重なります。日用品や水道光熱費、介護用のリフォーム費用など、項目ごとに見ていきましょう。
食費や日用品など日常生活に必要な出費
自宅介護では、食事や洗濯、清掃など、日常生活にかかる費用も無視できません。特に介護が必要な方の場合、食事の栄養バランスや特別な食事形態(きざみ食やペースト食)を意識する必要があります。市販の介護食や栄養補助食品を利用する場合、通常の食費よりも高くなることが多いです。
また、紙おむつや使い捨て手袋、ウェットティッシュなどの消耗品も毎月必要になります。具体的な毎月の目安としては、食費が1人あたり2万〜4万円、紙おむつや日用品で5,000円〜1万円程度が想定されます。家計簿やリストを活用して、無理なく管理することが大切です。
光熱費や水道代などのランニングコスト
介護が必要な方が自宅で快適に過ごすためには、室温管理や清潔な環境づくりが大切です。そのため、エアコンや暖房器具、加湿器などの使用頻度が増え、電気代・ガス代が上がる傾向があります。
また、入浴や洗濯の回数が増えることで、水道代も増加しやすくなります。たとえば、以前に比べて毎月3,000円〜5,000円程度光熱費が上乗せされることもあります。季節や地域によっても違いがありますので、電気料金の見直しや省エネ家電の導入で負担を和らげる方法も検討しましょう。
バリアフリー改修や介護用リフォームの費用
安全で快適な自宅介護のためには、段差の解消や手すりの設置、浴室やトイレのバリアフリー改修が必要になる場合があります。工事費用は規模によって異なりますが、手すり1カ所の設置で1万円~2万円、段差解消で3万円~10万円、浴室の改修では20万円を超えることもあります。
介護保険を利用すれば、住宅改修費用のうち20万円まで、自己負担1割で補助を受けることができます(一生涯で1回限り)。この制度を活用することで、経済的な負担を大きく軽減することが可能です。
福祉用具や介護用品のレンタル・購入費用
介護ベッドや車いす、体位変換器などの福祉用具は、自宅介護に欠かせないアイテムです。福祉用具の多くは介護保険でレンタルが可能で、たとえば介護ベッドは月額3,000円前後の自己負担で借りられることが一般的です。
購入が必要な場合は、ベッドや歩行器など1万円〜10万円と幅があります。レンタルと購入を上手に使い分け、必要なものだけを無駄なくそろえることがポイントです。介護用品店や自治体の窓口で相談しながら選ぶと安心です。
利用できる介護サービスと費用の内訳

自宅介護を支えるために利用できる主な介護サービスと、それぞれの費用の内訳について解説します。どのサービスが必要かを見極めることで、無駄のない利用ができます。
訪問介護や訪問看護の利用料金
訪問介護は、ホームヘルパーが自宅に訪問し、食事や掃除、入浴介助などを行うサービスです。1回30分利用した場合の自己負担額(1割負担)は約250円〜400円程度です。
訪問看護は、看護師が訪問し、健康状態の確認や医療的なケアを行うサービスで、1回の自己負担額は約500円〜1,200円程度となっています。医療保険が適用される場合もあるため、利用前に制度を確認しましょう。
いずれのサービスも、回数や内容によって月額費用が変わるため、ケアマネジャーと相談しながら利用計画を立てることが大切です。
デイサービスやショートステイの費用
デイサービスは日帰りで入浴や食事、リハビリを受けられる施設です。1回の自己負担(1割負担)は700円~1,200円前後が目安です。施設によっては食事代やレクリエーション費が別途必要な場合もあります。
ショートステイは数日から1週間ほど施設に宿泊して介護を受けるサービスです。1泊あたりの自己負担(1割負担)は2,000円~3,000円程度で、食費や宿泊費が加算される場合があります。
これらのサービスを組み合わせて利用することで、家族の負担軽減や介護者の休息にもつなげることができます。
地域密着型サービスの特徴と料金
地域密着型サービスには、小規模多機能型居宅介護や認知症対応型通所介護(デイサービス)などがあり、住み慣れた地域で柔軟なサービスが受けられます。たとえば、小規模多機能型居宅介護は、通い・泊まり・訪問を組み合わせて利用でき、1カ月の定額制です。
サービス | 月額自己負担(1割) |
---|---|
小規模多機能型居宅介護 | 約1.2万〜3万円 |
認知症対応型通所介護 | 1回約800円〜1,200円 |
地域の自治体や事業所によって詳細は異なりますので、利用前に相談窓口で確認しましょう。
介護サービス利用の自己負担を軽減する制度
介護費用の負担が重いと感じる場合、自己負担上限を設けた「高額介護サービス費制度」や、住民税非課税世帯への軽減措置などの公的支援が受けられる場合があります。
高額介護サービス費制度では、1カ月の自己負担が一定額を超えた場合に、超えた分が払い戻されます。上限額は所得や世帯状況によって異なりますが、一般的な世帯で月額約4万円が目安です。さらに、低所得の方を対象に自己負担が無料または軽減される特例もありますので、役所や介護保険窓口で相談してみてください。
自宅介護のメリットとデメリットを理解する

自宅介護には家族の安心感や自由度の高さの一方で、心身の負担や費用の問題もあります。それぞれの特徴を理解し、自分たちに合った方法を検討しましょう。
自宅介護のメリットと家族の心理的な安心感
自宅介護の大きなメリットは、住み慣れた環境で家族とともに生活できることです。本人にとっても、知らない場所や人に囲まれるより、日常のリズムを保ちながら過ごせることで心理的な安定を感じやすいです。
また、家族がそばにいることで、急な体調変化にもすぐに気づくことができ、柔軟に対応できます。一緒に過ごす時間が増えることで、家族の絆が深まるのも大きな魅力です。安心を感じながら介護を受けたい方には、自宅介護は選択肢となるでしょう。
自宅介護のデメリットと家族への負担
一方で、自宅介護には家族への負担が大きいというデメリットがあります。介護する家族が仕事やプライベートの時間を調整したり、体力的・精神的な負荷を感じたりすることがあります。特に長期間にわたる場合は、介護疲れや孤立感が生じやすくなります。
介護の知識や技術が不足していると、うまくケアができなかったり、ストレスを抱えこむ原因になります。必要に応じて外部のサービスやサポートを活用し、家族だけで抱え込まない工夫が大切です。
費用面で見る自宅介護と施設介護の違い
費用の観点から見ると、自宅介護は施設介護よりも比較的コストを抑えやすい傾向があります。介護サービスの利用頻度や内容を調整することができ、不要な費用をカットしやすいのが特徴です。
しかし、家族が対応できない場合には追加のサービス利用が必要となり、思ったより費用がかさむこともあります。一方、施設介護は月額費用が一定ですが、入居一時金や毎月の利用料が高額になる場合が多いです。事前に費用のシミュレーションを行い、無理のない選択を心がけましょう。
介護を続けるためのサポートや相談窓口
自宅介護を長く続けるためには、家族だけで抱え込まず、地域のサポートや相談窓口を積極的に利用しましょう。介護保険サービスの申請やケアプラン作成は、地域包括支援センターや市区町村の窓口で相談できます。
また、介護者向けの交流会やサポート団体、電話相談なども活用できます。困ったときや不安なときは、一人で悩まずに専門家や経験者の力を借りることが、介護生活を長く安定して続けるコツです。
介護費用を抑える方法と資金の工面アイデア
介護にかかる費用をできるだけ抑え、家計への負担を減らすための方法や、公的制度・資金調達の工夫について紹介します。
公的制度や助成金の活用方法
介護費用の軽減には、さまざまな公的制度や助成金の活用が有効です。たとえば、介護保険による自己負担の軽減、高額介護サービス費の払い戻し、住宅改修の補助金などがあります。
さらに、自治体によっては、介護用品の購入補助やタクシー利用券の配布、見守りサービスへの助成など独自の制度を持つところもあります。条件や申請方法は異なるため、お住まいの市区町村窓口や地域包括支援センターに問い合わせてみると良いでしょう。
ケアプランの見直しで費用を節約するコツ
ケアプランとは、介護サービスの利用計画のことです。必要なサービスを過不足なく利用するためには、定期的にケアプランを見直すことがポイントになります。たとえば、利用頻度や内容を調整することで、無駄な出費を抑えることができます。
また、介護保険でカバーされる範囲を最大限に活用することも大切です。ケアマネジャーとよく相談し、本人や家族の生活状況に合ったプランを作成しましょう。
住宅資産を活用したリバースモーゲージや借上げ制度
大きな初期費用や介護費用に備える方法の一つとして、住宅資産を活用するリバースモーゲージや借上げ制度があります。リバースモーゲージは、自宅を担保に金融機関から融資を受け、毎月の生活費や介護費用に充てる仕組みです。亡くなった後に住宅を売却して返済する仕組みのため、現金化が難しいときに役立つ場合もあります。
また、自治体の住宅借上げ制度なども利用できる場合があり、自宅を貸し出して得た収入を介護費用に充てるケースもあります。どちらも条件やリスクがあるので、専門家に相談した上で検討することが重要です。
介護費用の支払いに備える貯金や年金の活用
介護費用に備えるためには、計画的な貯金や年金の上手な活用が大切です。毎月の生活費と介護費用を把握し、どれくらいの備えが必要かを具体的に見積もっておきましょう。
また、老後の生活費として公的年金は大きな支えとなりますが、病気やけがで入院した場合に使える医療保険や、民間の介護保険に加入しておくことも安心につながります。家族で話し合いながら、将来に向けて無理のない備え方を考えていきましょう。
まとめ:自宅介護の費用とサポートを知り納得できる介護プランを立てよう
自宅介護には多様な費用が発生しますが、介護保険や公的助成、相談窓口などを活用することで、経済的な負担は大きく軽減できます。サービスの選び方や費用の管理、家族の負担軽減策をバランスよく組み合わせ、自分たちに合った介護プランを立てることが大切です。
不安や疑問がある場合は、地域の専門家や窓口に気軽に相談し、納得できる形で介護生活をスタートさせましょう。準備と情報収集が、家族の安心と豊かな老後の暮らしにつながります。